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関東勢優位が続く都市対抗野球で、
JR九州が見せた“最高の試合”。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph bySPORTS NIPPON

posted2010/09/08 10:30

関東勢優位が続く都市対抗野球で、JR九州が見せた“最高の試合”。<Number Web> photograph by SPORTS NIPPON

9月5日、都市対抗野球準々決勝のNTT東日本vs.JR九州戦。9回裏1死満塁、JR九州・藤島琢哉外野手がスクイズを外されるが、その隙をついて三塁走者代走・田中允信外野手がサヨナラのホームインを決めた。JR九州は2試合連続のサヨナラ勝ちでベスト4進出

JR九州が9回裏に驚異のプレーで奇跡を呼んだ!

<都市対抗準々決勝(9月5日) NTT東日本対JR九州>

 NTT東日本には大学時代、華やかな活躍をした選手がずらりと揃っているが、JR九州には1人もいない。そのJR九州が日立製作所、日本通運に続いて、関東の強豪を破ったのである。それも劇的としか言いようのない戦い方で。

 JR九州1点リードの2対1で迎えた8回表、NTT東日本は4番高尾佳之の右中間本塁打で同点にし、さらに9回表、7番上田祐介の左本塁打で逆転する。JR九州打線の2回以降の拙攻とNTT東日本の豊富な投手陣を考えれば、これで勝負あったと多くの人は思ったはずだが、JR九州は踏ん張った。

 9回裏、右前打で出塁した7番下田貴之を中野滋樹がバントで送り、代打・東向誠が四球で出塁して1死一、二塁。ここで1番田中マルシオ敬三が左前打を放ち、下田が生還。簡単に書いたが、下田の生還はタイミング的にはアウト。第1回WBCで見せた、川崎宗則(ソフトバンク)の“神の手”生還を再現するような高等技術がもたらした同点劇である。

スクイズを失敗するも執念の滑り込みで間一髪セーフに!

 さらに1死二、三塁と好機は続き、田村亮の敬遠四球で満塁。ここでJR九州ベンチが3番藤島琢哉に送ったサインはスクイズ。藤島琢哉のバットは外角低めに大きく外れたボール球に触れることができず、チャンスはついえたと思われたが、猛然と本塁に突っ込んだ田中允信の勢いは止まらずに本当に間一髪のタイミングでセーフ。捕手・上田は地面に突っ伏したまましばらく立てず、明暗をはっきり分けた。

 意外性のあるゲーム展開と好投手の存在(NTT東京→小石博孝、JR九州→濱野雅慎)は好ゲームの要素に欠かせないが、それに走塁の激しさと東西対抗の面白さが加わり、この一戦は掛け値なしに私の中で忘れられない試合になった。

 社会人野球は年齢の高い選手が多いので技術指導と言うより、メンタル面のケア次第で活躍もするし低迷もする。そういうメンタル面の充実が、準々決勝のJR九州の走塁にはっきり見えたし、選手層の厚みで劣る関東勢以外のチームの戦い方として今後参考になると確信した。

 社会人野球は高校野球、大学野球にくらべると注目度が低く、マスコミの扱いが小さいが、1回戦の日本新薬戦で完封勝利した牧田和久(日本通運)のような超絶技巧のアンダースローがいたり、東芝戦で150キロを記録した金丸将也(東海理化)のような無名の左腕がいたりと、びっくり箱のような楽しさがある。もっと多くの野球ファンに社会人野球を楽しんでほしいと心の底から思った。

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