オリンピックへの道BACK NUMBER
世代交代、暴力問題からの再生へ。
女子柔道で若き力が見せた気迫。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2013/05/13 11:40
柔道体重別選手権女子48kg級決勝。浅見八瑠奈は、母校・山梨学院大の後輩・山崎珠美に一本背負いで一本勝ち。8度目の出場で初めて掴んだ優勝に涙が溢れた。
観客席からの光景は、はじめは違和感と、新鮮さを伴って映った。
試合場には、今まで2名座っていた副審の姿はなく、主審しかいない。また、選手たちの戦う姿や試合の展開にもこれまでとは変化が感じられる。
5月11、12日、福岡国際センターで行なわれた柔道の全日本選抜体重別選手権。今年8月末からリオデジャネイロで開催される世界選手権の代表最終選考会でもある今大会は、いろいろな意味で、新たなスタートの場となった。
ロンドン五輪を経て、階級の第一人者の引退が相次いだ。休養している選手もいる。そんな中での大会は、出場するあらゆる選手にとって、世界選手権代表はむろん、2016年のリオデジャネイロ五輪への第一歩なのである。
また今年2月から、国際柔道連盟は試験的に新ルールを導入したが、そのルールのもとで初めて行なわれる国内大会でもあった。
脚取りは禁止となり、きちんと組んで投げを狙う柔道を推進する方針から、消極的な姿勢などには指導を厳しく出すなどの変更がなされた。前述のとおり、副審は試合場から離れたジュリー席(試合のビデオがチェックできる審査委員のブース)へと移り、主審のサポートを行なうようになったのも変更点のひとつだ。
柔道連盟の騒動後、初めて男女全階級の主要選手が揃った大会。
選手たちは練習で、あるいは海外遠征での実戦で、対応に努めてきた。それは審判団も同様だ。ただ、導入されてまだ時間はさほど経ってはいない。審判ごとに指導を出すタイミングが異なるように思えることもあれば、例えば男子の選手には、脚取り、あるいは指導4つで反則負けを喫する選手もいたし、判定に納得のいかないような表情の女子の選手もいた。ルールという点でも、新たなスタートと言えるだろう。
そして今大会は、今年になって初めて男女全階級の主要選手が一堂に会する場でもあった。
日本柔道界は、今年1月の女子選手たちの暴力問題告発以降、重苦しい雰囲気に包まれ、改革へのさまざまな取り組みが行なわれてきた。その足どりの中で、初めて選手が揃う場であったということである。