オリンピックへの道BACK NUMBER
世代交代、暴力問題からの再生へ。
女子柔道で若き力が見せた気迫。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2013/05/13 11:40
柔道体重別選手権女子48kg級決勝。浅見八瑠奈は、母校・山梨学院大の後輩・山崎珠美に一本背負いで一本勝ち。8度目の出場で初めて掴んだ優勝に涙が溢れた。
日本柔道界の改革は道半ばではあるが……。
自分自身の思いを背負って臨んでいたのは、浅見にかぎったことではない。
例えば、女子52kg級の橋本優貴(24歳)。
橋本は2012年から、国際大会の個人戦で6連続優勝を続けている。しかし、一昨年の選抜体重別では決勝で、昨年は準決勝で中村美里(24歳)に敗れ、辛酸をなめてきた。
その中村が左膝の手術とリハビリなどで不在であった今大会の決勝では、中村と並ぶ第一人者の西田優香(27歳)に初めて勝利して初優勝。世界選手権の初代表を決めた。
「自分らしくできたと思います。今まで勝ったことがないので勝ちたい気持ちが強くて、自分らしい柔道で勝ちたいと思っていました」
橋本も涙だった。
日本柔道界の改革はまだまだ途上だ。その再建の過程をあらためて考えてみても、決して明るい材料ばかりではない。それらすべての施策は、告発した選手たちの思いに、真摯に応えるものであったかどうか……。
ただ、現場にいる選手たちは、そうした空気を意識しながらも、それぞれが柔道にかけてきた時間をこめて、自分の柔道を出し切ろうと心がけていた。
その気迫は、主役は自分たちであることを、そして、柔道への思いを訴えているかのようにも思えた。
48kg級、52kg級以外の女子の世界選手権の代表には次の選手が選ばれた。
57kg級 山本杏(18歳)
63kg級 阿部香菜(25歳)、田中美衣(25歳)
70kg級 田知本遥(22歳)
78kg級 緒方亜香里(22歳)、佐藤瑠香(21歳)
78kg超級 田知本愛(24歳)
(注 前回までは各階級2名だったが、今回より各階級1名、ただし任意の2階級で1名ずつ追加できる)
9名中、ロンドン五輪経験者は田知本遥、緒方の2名のみ。
新しい顔ぶれで、次のオリンピックへ、一歩を踏み出した。