濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“観る側”を徹底的に意識した興行で、
立ち技格闘技Krush、札止め続出!
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2013/05/24 10:30
5月12日Krush後楽園ホール大会で寺戸伸近に判定狩ち、-58kgの初代王者に輝いた21歳の武尊(中央)と宮田充プロデューサー(左)。
今年に入って、立ち技格闘技イベントKrushの好調ぶりに拍車がかかっている。1月14日に初のビッグマッチ、代々木第二体育館大会を開催。その後1月26日、3月20日、5月12日と3回行なわれた後楽園ホール大会は、すべて超満員札止めになった。
6月16日の後楽園大会も、開催1カ月前の時点で指定席が完売に。このままいけば、Krushでも人気アーティストのライブのような“チケット争奪戦”が起こることになるかもしれない。
「最近、特に増えているのは会場販売の数字です。試合を見たお客さんが、帰る時に次回大会のチケットを買っていかれるんですよ」
そう語るのは、Krushの宮田充プロデューサー。会場で次のチケットを買うということは、その日の満足度が高かったことの証明だ。実際、Krushの試合は誰が見ても興奮できる激しい打ち合い、KO決着が多い。選手も“このリングでは激しい試合で観客を満足させなければいけない。ただ勝つだけではいけない”という意識を強く持っている。
マッチメイクにある明確で残酷な“差別”。
5.12後楽園のメインで寺戸伸近との壮絶な打撃戦を制し、新階級-58kgの初代チャンピオンとなった武尊(たける)は、試合後にKrushファイターとしての覚悟とプライドを強調した。
「Krushのチャンピオンシップですからね。グダグダの判定で勝ってもチャンピオンとして認めてもらえない。これからも“Krushの闘い”で世界を目指したいです」
宮田が選手に試合内容についての注文をつけることはないという。「試合が始まってしまえば、そこは僕が触れる領域じゃない。選手とレフェリーに任せるだけです」。ただし、マッチメイクには明確で残酷な“差別”がある。Krushの試合に“激闘”が多い理由を、宮田はこう説明する。
「“なんでアイツは毎月のように試合が組まれるのに、俺は4カ月に1回なんだろう”と思う選手もいるはず。その理由をちゃんと考えたら“勝てばいい”では済まなくなってくるんじゃないですかね」