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ラツィオ、13年ぶりの2冠なるか?
“地味メン”が打倒ユーベに名乗り。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2013/01/24 10:30

ラツィオ、13年ぶりの2冠なるか?“地味メン”が打倒ユーベに名乗り。<Number Web> photograph by AFLO

クローゼ(一番左)のゴールを祝う司令塔・エルナネス(左から2番目)らチームメイト。

 '99-'00年シーズン、ラツィオによる“ミレニアム・スクデット”は、セリエA史上屈指の逆転優勝として記憶されている。

“セッテ・ソレッレ(=7シスターズ)”と呼ばれる強豪クラブが、イタリアと欧州を席巻した時代。常勝ユベントスの前線にいたのはデル・ピエーロとインザーギ、そしてあのジダン。ミランにはボバンとウェア、シェフチェンコが揃い、ロナウドとバッジョがインテルのユニフォームを着たシーズンはまさに豪華絢爛。

 オールスター・リーグの様相を呈した当時のイタリアにあって、なおラツィオのメンバー表の充実ぶりは頭一つ抜けていた。

 FWマンチーニ(現マンチェスター・C監督)、MFシメオネ(現A・マドリー監督)、MFネドベド(現ユベントス取締役・'03年バロンドール)、MFベロン(現エストゥディアンテスSD)、DFミハイロビッチ(現セルビア代表監督)……。彼らが最終節でユベントスを“うっちゃった”世紀の大逆転劇は今も色褪せない。

 '98年5月、イタリア初の株式上場クラブとなったラツィオは株式市場からの資金調達という錬金術によって、欧州中の高額選手を次々に手中に収め始める。移籍市場において、現在のレアル・マドリーやマンチェスター・Cにも匹敵する影響力を誇った。

 錚々たる顔ぶれの千両役者たちがそれぞれ“自分が決めてやる”とばかりに毎試合豪快に勝利を目指し、最終的にユーベをねじ伏せた。

「勝負ごとで最後にモノを言うのはやっぱりメンタルだよ」

 シワひとつない若き日のDFネスタ(現MLSモントリオール)は、自身の初スクデットとなる歓喜の中で叫んだ。名将エリクソンの下、圧倒的な個の力を誇ったチームは、その年のコッパ・イタリアも制し見事2冠を達成、今も燦然とリーグ史に名を残す。

緊縮財政下のスターなきラツィオに巡ってきた絶好機。

 時は巡って2013年、今季のラツィオに再びダブル・タイトル獲得のチャンスが巡ってきた。冬本番を迎えた今、セリエAで首位ユベントスを追う一方、コッパ・イタリアでも準決勝に進出。この躍進ぶりは名物会長ロティートですら予想できなかったはずだ。

 現在のラツィオには、バロンドール候補はおろか、CLを沸かせるようなビッグネームもスター選手もいない。

 2冠達成後、膨らんだ巨額負債によってクラブ財政は急速に悪化。'05年、破産を免れる代わりに税務当局と結んだ1億4000万ユーロの分割払い協約が、'28年まで残っている。緊縮財政により有名選手の獲得は当分望むべくもない。13年前の栄光から一転、今のラツィオは欧州の表舞台と縁遠い“地味メン”ばかりで構成されている。

【次ページ】 ELグループリーグ首位通過が証明した“いぶし銀”の力。

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