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ラツィオ、13年ぶりの2冠なるか?
“地味メン”が打倒ユーベに名乗り。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/01/24 10:30
クローゼ(一番左)のゴールを祝う司令塔・エルナネス(左から2番目)らチームメイト。
ELグループリーグ首位通過が証明した“いぶし銀”の力。
現在のスタメンは、移籍金ゼロだったエースFWクローゼを初め、500万ユーロ以下で集められた選手ばかり。ただし、いずれも“いぶし銀”タイプが揃う。
技巧派を並べた中盤には、得点能力へ磨きをかけた司令塔エルナネスやセリエA通算300試合出場を果たしたばかりのレデスマが睨みを利かせる。
昨年5月に国際違法賭博事件への関与容疑で逮捕されたMFマウリは、左サイドで“明日なき戦い”の真っ最中だ。来月以降に予定される規律委員会で、彼が長期出場停止処分を受けるのは必至。残された時間を無駄にできないマウリが放つキックの一本一本には凄みがある。
彼らの実力が決して侮れないことは、ELグループリーグでトッテナムを上回って首位通過したことからも明らかだ。
強気なペトコビッチ監督だが、選手層の薄さは泣き所。
昨年の夏、ラツィオの新監督に抜擢されたサラエボ出身のペトコビッチは、進行中のゲームで相手の次の手を読むことに長け、頻繁な布陣変更を選手に強いる。両サイドに高い位置で張る中盤5枚をベースに、3バックと4バックを器用に使い分けるには、相応の運動量と習熟する時間が必要だった。
選手たちは当初戸惑ったが、実戦をこなすうちに、少々北方訛りのイタリア語を話す指揮官の指示が身体に馴染んできた。
「今のラツィオは、まだ潜在能力の70~80%しか発揮していない。これから先、今より上を狙うにはより強いチームにならなくてはならない」
年明けの2試合でユベントスがまさかの1敗1分けに終わると、ラツィオは王者の失速に乗じて、11月の時点で9点もあった勝ち点差を20節終了時点で3にまで縮めた。ユベントスとのコッパ・イタリア準決勝も目前に迫っている。ボルシアMGとの対戦を控えるEL決勝トーナメントも疎かにするつもりはない。
3つのコンペティションを抱えるラツィオの泣き所は選手層の薄さだ。
1月市場で狙うMFカセミロ(サンパウロ)の獲得へ捻出できるのは600万ユーロが限度。チェルシーとの契約終了が近いMFランパードにも誘いをかけてみたが、前年CL王者獲得の実現性は最初から薄い。