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「飛ばない」低反発球に統一決定!
矛盾抱えつつもプロ野球界が国際化。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byTamon Matsuzono
posted2010/06/29 10:30
今季はミズノ、ゼット、久保田、アシックスの4社がボールを供給。来季からは全球団、全球場で同じボールが使用される見通しだ
急激にボールの質を変えると選手の故障につながる。
国際試合で使うボールは表面がツルツルしていて、滑りやすい。それが日本のボールに慣れている投手には非常に違和感となって、慣れるのに時間がかかると言われる。
実は日本のボールは革をなめす段階でたっぷりと油を含ませて、しっとりとした仕上げにしている。それが独特の指に吸い付くようなしなやかさを生んでいる。
ところがメジャーで使用してるボールや、同じミズノ社製でも五輪などで使用された中国製「ミズノ150」というボールは、この油になじませる過程が短く、ツルツルしたものとなっている。
要するに丁寧に作ったボールより、過程を少し省略して、言葉は悪いが粗悪に作ったものに合わせなければならないことになる。
ただ、このボールの滑りに関しては、今回は見送られることになった。
現場サイドから「急速なボールの感触の変化は、握りの強さやフォームに影響するため、故障の原因になりかねない」という声が上がっていた。そこを配慮したものだった。
あえてボールの品質を落とすという努力もするべき!!
そしてもう一つはボールの均一性だった。
実はメジャーの使用球(R社製で生産地はコスタリカ)の大きな特徴として、ボールの縫い目や、ひどいものでは球体の形そのものが不ぞろいなものさえあるといわれている。
来年から採用されるボールでは、縫い目を高くして、これまで選手から「握った感覚が大きく感じる」といわれていたメジャー球に近い形状をできるだけ再現することになる。ただ、それでもあえて縫い目や形を不ぞろいにすることはできない。
「ボールの国際化とは品質を劣化させることなんでしょうか……」
あるメーカー(あえて断っておくがミズノ社ではない)関係者の言葉だった。
技術力と独特のキメの細かさからこそ起こる「飛ばないボール」論争。もし国際化を一義的に意識したボール改革を断行するならば、徹底してメジャーの使用球に近づけることも必要だろう。あえて日本的な感覚では“粗悪品”となるボールを作ることになっても、徹底してやらなければ意味はないような気もする。