野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
百人百様の野球人生の交差点――。
初心者のためのトライアウト生観戦術。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byKYODO
posted2012/11/06 10:30
阪神から戦力外通告を受けた後の下柳や元横浜の古木も参加した昨年のトライアウト。ほっともっとフィールド神戸のスタンドは観客で埋まった。
選手集合は10時、シートバッティングは11時頃から。
話を戻そう。グラウンドに選手が出始め、それぞれにアップをはじめると、例年、10時頃に参加選手が一堂に会して運営役員からの説明を受け、その後にシートノックが始まる。テレビでお馴染みのシートバッティングが始まるのは11時頃だ。
試合形式のシートバッティングは参加人数によって細かい数字は変わるが、大体投手1人につき打者4~5人。打者はフォアボールがカウントされたりされなかったりで、5~7打席ほど。ルールはカウント1-1からというぐらいで、厳密なものはなく、「足をアピールしたい選手はご自由に塁に出てくださーい」とアナウンスされた年もあったりと、自由度はかなり高い。
シートバッティング中は、シーズンとは違い鳴り物の応援はないので、基本球場は打球の音だけが響き渡り、選手の声をはじめ、いろんな音が聞こえてくる。'08年横須賀のベイスターズ球場で元阪神の正田樹が登板した際には、隣接する長浦港に停泊していた自衛隊艦からよりにもよって「蛍の光」(相手投手がKOされた時に阪神の応援団が歌っていた)が流れてくるハプニングもあった。正田は好投してことなきを得たが。
たとえ知らない選手であっても、温かい目で見守って。
トライアウトはチームではなく個人の戦いであるため、スタンドのファンも横断幕を持参するなど、選手個人を追い掛ける熱狂的な人が多い。その年の注目選手、人気選手などがウグイス嬢に呼ばれると、球場全体から盛大な拍手が沸く。反面、知名度のない育成選手・独立リーガーなども数多く参加しているため、拍手の量に差が出てしまうのがいたたまれないが、個人的に入れ込んでいる選手がいる人はここが声援の飛ばしどころではある。
球場が静かな分、よく声が通るので、「声援が励みになった」という選手も過去に少なくなかった。そういえば、'07年のジャイアンツ球場では、ソコソコ知名度のあった三浦貴が打席に立つ際、ウグイス嬢から「誰?」というまさかの声が漏れてしまったことも。……決して野次などで心を折らないように。
シートバッティングに飽きたら、ネット裏の関係者席を見るのも面白い。過去には楽天・野村、中日・落合、オリックス・岡田などの監督が直接視察に訪れている。スカウト編成は、12球団だけでなくMLB、アジア、独立リーグ、社会人などあらゆるところから。元選手の姿もちらほら見られる。その他、過去にはK-1の谷川貞治氏や、競輪の中野浩一氏、滝沢正光氏がブースを出していたり、元巨人の元木大介氏が後輩を励ましにスタンドに現れたりと、いろんな顔が拝める。