野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
百人百様の野球人生の交差点――。
初心者のためのトライアウト生観戦術。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byKYODO
posted2012/11/06 10:30
阪神から戦力外通告を受けた後の下柳や元横浜の古木も参加した昨年のトライアウト。ほっともっとフィールド神戸のスタンドは観客で埋まった。
今年もまたこの季節、東山紀之の声が聞こえてくる季節になりました。
12球団合同トライアウト。アジアシリーズでの巨人の初戦と同じ、今週末9日に仙台・Kスタ宮城で行われる、秋の恒例行事である。
今やそこでの結果は関係なく「入団が決まる選手は事前に話が決まっている」なんて話も漏れ聞こえてくるが、TBSの年末特番の影響なのか、その注目度は今や「アジア制覇はどこの国が!」なんて話題をも上回ってしまっている感があるわけで(それもまた寂しい限りなのだが)、球場に集まってくるギャラリーの数も年々増えてきているのが現状である。
'05年以来、筆者も毎年トライアウト取材に赴いているのだが、確かにその人生を懸けた真剣勝負の場は、シーズンとはまったく違った独特の雰囲気があり、見るべきドラマが幾つもあるように思える。
というわけで、今回はテレビ番組だけではわからない、「初心者のためのトライアウト生観戦」の魅力について書いていこうと思う。
トライアウト参加選手は当日を迎えるまでわからない。
まず、最初の見所は“誰が参加してくるのか”ということ。
トライアウトに参加する選手は、事前に個人ブログや新聞報道などで参加表明をしている選手以外は、当日の朝配られる出場選手表を見るまで誰が来るのか皆目見当もつかない。故に「この選手が来るなんて!」「あの選手目当てに来たのにいない……」なんてことがよく起こる。
大物選手などはトライアウト受験を嫌う傾向にあるが、去年の下柳剛や一昨年の堀幸一のように大物ベテラン選手が紛れ込んでくる事もあるので油断はできない。さらに、今年戦力外を受けた選手だけでなく独立リーグ経由または野球浪人を経て再挑戦をする懐かしの選手が来るのも興味深いところ。昨年「メジャー挑戦後は焼き鳥屋をやっている」と噂に聞いていた野口茂樹の名を見た時はひっくり返ったものだ。今年は1年間野球浪人していた佐伯貴弘が参加するとの報道があったようだが、はてさて。
受ける選手も、応援するファンも防寒対策はしっかりと。
ちなみにトライアウトの朝は早い。
過去を見ても、8時頃から選手が受付に現れはじめるため、入り待ちする熱心なファンはそれ以前に来場する。また、最前列で贔屓選手に声援を送りたいと願う有難いファンも結構いるため、席取りはそこそこ熾烈だ。昨年1200人を集めた神戸でのトライアウトで先頭を取った古木ファンのアヤコさんは、7時半から並んでいたそうだ。あくまでも目安として。
さらにトライアウトは寒い。
11月の開催は毎年気温10℃前後の寒さの中で行われるため、指先が悴んで制球を乱す投手、動きが悪い選手、焚き火の周りから出られないベテランなども出る。ファンも大概凍えている。特に今年は仙台での開催なので、防寒対策はしっかりとしておくことをオススメする。また、'09年の甲子園でのトライアウトは雨により急遽室内練習場で行われ、一般には非公開となっていた。遠方から参戦する人は、天候などによる不測の事態が起こる覚悟もしておこう。