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WBC3連覇に立ちふさがる難題とは?
“強運”山本浩二監督が抱える悩み。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2012/10/15 10:30
紆余曲折の末、第3回WBCの監督に就任した山本浩二。2005年に広島の監督を退任して以来7年間のブランクはあるが、「勝利に向かっていく」と3連覇への意気込みを語った。
高校野球の名将として知られる木内幸男さんの取材をしていたときに、突然こんなことを言い出したことがあったのを覚えている。
「監督同士でゴルフをすっと、OB方向に飛んでったボールがアウトかセーフかで、そのチームの強さは判るんですよ」
その心は……。
「高校野球の監督に一番大事なのはツキがあるか、ないかだから。夏の大会を勝ち抜くのには、力だけじゃ絶対ダメなの。ツキがない監督だと、力があっても絶対に予選を勝ち抜けない。逆に強いチームの監督は、必ずOBラインの内っ側にボールが残っているから。これって実は監督の大事な条件なの!」
当時はまだ取手二高の監督だったが、無名の県立高と、その後は常総学院を甲子園の常連校に仕立て上げたその手腕を見るにつけ、この“監督ツキ論”に妙に納得させられたものだった。
戯れに買った宝くじで80万円を当てた山本監督の強運。
「おう、何やそれ?」
広島の監督を退いた直後の山本浩二から、そう声をかけられたのは確か東京ドームでのことだったと思う。
友人の放送関係者らと宝くじのナンバーズをやっているときだった。
もの珍しそうにその光景を見ていた山本さんが「おもしろそうやないか。ちょっとオレもやってみようかのう」と数字をチョイスして、くじを買うことになった。
そして山本浩二は……ツキが太かったのである。
いきなり80万円超の当たりをゲット。
「面白いもんやのう」
数日後に、何とも簡単に言ってのけたのだ。
こんなたとえを書くと、不遜と怒られるかもしれないが、やっぱり勝負をする人間にとって、大事な要素の一つはこの“ツキの太さ”だと思っている。
高校野球という不確定要素の大きな戦いで、木内さんが語った言葉は、実に勝負の世界の真実を射抜いている。そしてその“監督ツキ論”から(もちろんそれだけではないが!)考えると、山本浩二は監督としてかなりの資質を持つ人物の一人だと確信するわけである。