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阪神はこうすれば強くなる!!
OPSで考える、猛虎打線の理想形。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/06/01 10:30
実際に阪神打線をOPSで分析すると驚くべき結果が!
打率であれば3割を超えるのがひとつのステイタスになるが、OPSの場合はどうか。「.800」を超えると一流打者と言われている。これがひとつの境目である。
もともと私は交流戦を見ていて、阪神のブラゼルがなぜ7番に座っているのかまったく理解できなかった。OPSを見ていくと、ブラゼルは「.900」を超え、阪神の打者で最高の数値を残しているからだ(数値はすべて5月26日現在のもの)。
5月22日のオリックス戦、阪神は3対5で敗れたが、この時の打順は次のようになっている。
打順 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
---|---|---|---|
マートン | 0.398 | 0.538 | 0.936 |
平野 | 0.355 | 0.391 | 0.746 |
鳥谷 | 0.352 | 0.442 | 0.794 |
新井 | 0.350 | 0.460 | 0.810 |
金本 | 0.263 | 0.349 | 0.612 |
城島 | 0.328 | 0.441 | 0.769 |
ブラゼル | 0.343 | 0.599 | 0.942 |
桜井 | 0.353 | 0.468 | 0.821 |
葛城 | 0.309 | 0.313 | 0.622 |
OPSナンバーワンのブラゼルが7番。しかしその前に金本、城島は決して出塁率が高いわけではなく、事実、この試合でブラゼルは6回に本塁打を放っているがソロホーマーだった。この打線の組み方ではブラゼルの打席が単発に終わってしまう可能性が高いのだ。しかも7番では試合の終盤に打席が回ってくるかどうか、微妙な情勢になる場合も考えられる。
また、ブラゼルに次ぐ数字を残しているマートンがトップバッターであることにも疑問符がつく。たしかに出塁率は高く、チャンスメイクに絡める可能性が高いのだが、8番、9番の出塁率が高くないとマートンの効果が薄くなってしまう。
OPSをもとに打順を分析すると、この日の阪神打線は機能性が低い打線と言わざるを得なかった。
ついに動いた真弓監督。打線入れ替えの効果は?
ところが5月24日になって真弓監督は打線を入れ替える。
打順 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
---|---|---|---|
平野 | 0.355 | 0.391 | 0.746 |
藤川俊 | 0.311 | 0.381 | 0.692 |
マートン | 0.398 | 0.538 | 0.936 |
新井 | 0.350 | 0.460 | 0.810 |
ブラゼル | 0.343 | 0.599 | 0.942 |
城島 | 0.328 | 0.441 | 0.769 |
鳥谷 | 0.352 | 0.442 | 0.794 |
桜井 | 0.353 | 0.468 | 0.821 |
投手 |
3番マートン、5番ブラゼル。
OPSから判断する限り、妥当なクリーンナップの組み方になった。出塁率からみるとマートンの方が高く、4番新井、5番ブラゼルにつなぎやすく、得点のチャンスは一気に高まる組み方である。英語で言うなら”make sense”、道理にかなったクリーンナップだ。もう少し早いタイミングでこの打順を見てみたかったと正直、思う。