フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
今年の全米OPはゴルフ史上最難関!!
百戦錬磨のベテラン達はどう戦った?
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKoji Aoki/AFLO SPORT
posted2012/06/21 10:30

先にコースアウトしたウェブ・シンプソンはクラブハウスで、妻と子供の動画を見るなどして、最終組が最終ホールに入るのを待った。
優勝の影が見えたウッズ、エルスから逃げていった勝利。
我慢、忍耐、辛抱。
だが、彼らの献身は結局報われることはなかった。
決勝ラウンドを首位で迎えたウッズは、4年ぶりのメジャー制覇を視界にとらえて心が揺らいだか、3日目にグリーン上でのミスから失速していった。最終日はチャージの必要な5打差からのスタート。パーとの戦いではなく、バーディーとの戦いを強いられた時点で結果はすでに見えていた。
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エルスもまた復活優勝が期待される位置にいながら、15年ぶり3度目の栄冠には届かなかった。最終日16番パー5での3打目。バーディーが必要な場面だっただけにグリーン左手前の厳しいピン位置を9番アイアンで攻めた。しかし、結果はグリーン左に落としてのボギー。わずかに前のめりにギアを入れ替えた途端、タイトルはエルスの手からするりと逃げていった。
「今はすごくがっかりしてる。チャンスはあったんだ。必要なのは耐えることだけだと思ってうまくやっていたのに。16番のミスで全てが台無しになった。あの3打目は今夜寝るときになっても頭から離れないと思うよ」
最後の最後でミスを連発したフューリクは放心状態に。
しぶとく、粘り強く首位を走り続けたフューリクも最後の3ホールで力尽きた。
「自信もあったし、自分を信頼もしていた。もう少しだったのに勝てなかった。残念なんてもんじゃない」と失望を隠そうとはしなかった。
大きな悔いが残ったのは16番のティーショットだった。ツアー史上最長の670ヤードのパー5。ただし、この日はティーグラウンドが100ヤード近く前に出ていた。終盤にスコアを動かすチャンスを与えようというUSGAの意図だったが、フューリクには大きな誤算だった。
「いくつかのティーを使用するというのはUSGAから知らされていた。でも100ヤードも前とは考えもしなかった。せいぜい2日目みたいに65ヤードぐらいだろうと考えてたんだ。いざ100ヤードも前のティーに立つとフェアウェイは右から左にL字に曲がって見える。まるで準備をしていなかったし、どこに打っていいかも分からなかったから、3番ウッドで少しだけ攻撃的なルートを選んだ」
自分への信頼がほんのわずかに揺らいだ瞬間、ティーショットは出だしから大きく左に曲がって林にのみこまれた。信じられないミスショットからボギーを叩いて首位陥落。
1打を追って最後の望みをかけた18番でも、2打目を左に引っ張ってバンカーにのみ込まれた。我慢に我慢を重ねたあげく、最後に奈落に突き落とされた。フューリクは精根尽き果てた表情でその場にへたり込んだ。