フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
今年の全米OPはゴルフ史上最難関!!
百戦錬磨のベテラン達はどう戦った?
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byKoji Aoki/AFLO SPORT
posted2012/06/21 10:30

先にコースアウトしたウェブ・シンプソンはクラブハウスで、妻と子供の動画を見るなどして、最終組が最終ホールに入るのを待った。
「今週は誰もAなんてもらえないよ」とマクダウエル。
最終組で一緒にプレーしていたマクダウエルはフューリクを気遣った。マクダウエル自身は18番のバーディーパットまで優勝への望みをつないでの2位。
「俺は出だしでつまずいてから巻き返して2位になった。もちろん悔しさでいっぱいだけど、まだマシだよ。ジムは素晴らしいプレーをずっと続けていた。その分、俺よりもひどい気分だろう」
そして、過酷なテストを終えて、落胆の中でこう自己採点した。
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「こんなとんでもないコースじゃあA評価をもらえるようなゴルフはなかなかできないし、今週は誰もAなんてもらえないよ。でも、自分はBプラスぐらいはつけてもらえるかな。おかげで優勝争いができた」
クラブハウスで待っていたシンプソンに舞い込んだ優勝。
今回のテストでもっとも優秀な成績を収めたのはツアー4年目のウェブ・シンプソン。最終組の3組前でスタートして、優勝争いの重圧に押しつぶされる前に通算1オーバーでホールアウト。クラブハウスで待つうちに優勝が舞い込んできた。「3組前だったのはすごく助かったと思う。ただでさえコースからの強烈なプレッシャーを1週間感じ続けてたのに、メジャーの最終組の重圧なんて想像もつかないよ」とメジャー初制覇の喜びに顔を紅潮させながら語っていた。
フューリクはホールアウト後もなおひどく打ちひしがれていた。
「あと何年かはいいプレーを続けられると思う。次のチャンスをつかみたいが、またメジャーでこういう場面が訪れてくれるかどうか。それは分からないよ」
まだ26歳で前途洋々のシンプソンとは違う。キャリア晩年にさしかかっている42歳の悲痛な思い。それは多かれ少なかれ、ベテランと呼ばれるようになったウッズやエルスにも共通するものであるはずだ。
白く霞んだ最終日のオリンピッククラブ。サンフランシスコの霧の中に、勝者の歓喜よりも敗者たちの影が色濃く浮かび上がった。
