青春GOLF ――石川遼に密着! BACK NUMBER
プロ4年目にして初の優勝「0」。
石川遼の今季3つの誤算とは?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2011/12/07 10:30
東京よみうりカントリークラブで開催された今季最終戦の日本シリーズJTカップ。石川は首位で最終日を迎えたものの、スコアを伸ばしきれず逆転優勝を果たした藤田寛之と3打差の3位で大会を終えた
雨さえなければ松山をとらえていたかもしれない……。
同じように11月の三井住友VISA太平洋マスターズも雨にたたられ、54ホール競技に変更された。
この大会もプロになってからトップ5を外したことのない得意の試合である。初日こそ出遅れたが、その後は着実に追い上げて、最終日はホールインワンまで奪って優勝争いに絡む活躍を見せた。優勝した松山英樹とは4打差の8位。あと18ホールあればと思わせるに十分なプレーだった。
長距離走のつもりでスタートしたら突然、短距離走に変えられてしまったような不条理。ゴルフが自然を相手に行う競技である以上、悪天候による短縮はゴルファーが受け入れるべき宿命でもある。しかし、それが「自分にとってもっとも優勝のチャンスがあると思ってやってきた」という2試合で起きたところに今季のツキのなさが現れていた。
2つ目は、大胆な攻めと曲がり続けたドライバーショットの悪循環。
もちろん運不運では片づけられないプレー面の課題もあった。それは曲がり続けたドライバーショットである。
大胆な攻めを持ち味とするタイプの石川は元来、フェアウエーキープ率の高い選手ではない。しかし、今季のフェアウエーキープ率は43.13%で106位と昨年(49.20%、71位)や一昨年(47.95%、87位)も下回って自己ワースト。計測ホールでも曲げるから、平均飛距離の数字も落ちていく悪循環だった。
8月の世界ゴルフ選手権シリーズ、ブリヂストン招待では今季ハイライトともいえる大活躍で、米ツアー自己最高の4位に入った。アダム・スコットを向こうに回して最終日のバックナインまで堂々と優勝を争った姿は、日本どころか、近い将来の米ツアーでの優勝をも予感させるものだった。
確実性よりも飛距離を求めたことが裏目に……。
しかし、石川はこの遠征から帰国した後にスイングの見直しを始めるのである。
「ブリヂストン招待で4位にはなれたけど、スイングの形にこだわりすぎてアダムにも飛距離で離され過ぎていた。とにかくできるだけ前に飛ばせるスイング、躍動感をテーマにもってもう1回練習しようと」
確実性よりもさらなる飛距離を求めて――。自ら望んだこととはいえ、シーズン中盤の方針転換により、例年なら安定感の増してくる秋口になってもあいかわらずドライバーは曲がり続けた。躍動感は制御不能な振りすぎと紙一重だった。
最終戦の日本シリーズJTカップもそうだ。首位で迎えた最終日、優勝のチャンスを残していた後半の13、14番でドライバーが左へ右へと大きく乱れ、「優勝争いの中でフェアウエーキープできないのは相手にスキを与えてしまう」と自ら敗因を語った。
肝心なところで取り返しのつかないドライバーのミスが出る。この試合に限らず、後半戦の石川につきまとった課題が最後の最後にも顔をのぞかせた。
飛距離を追求したスイングの“試行錯誤”は無駄ではない。
「今季は時間が経つにつれて、どんどん飛ばないコンパクトなスイングになってきてしまっていた。自分にとって一番いいスイングは飛距離を出せるスイングだと思い直して、そこからいろんな打ち方やスイングを試してきた。試行錯誤の連続で曲がりを抑えられなかったし、タイミングが合わないことも多かったけど、スイングがバラバラになってもいいから、あれをやってみようこれをやってみようと怖がらずに行動に移せたのはよかった。今日の感じだと、ある一つの方向は見えてきたんじゃないかと思う」
最終戦最終日のプレーを終えてそう語った石川。その前向きな手応えは来季へつながるものになるだろうか。