岡田ジャパン試合レビューBACK NUMBER
アジア杯最終予選
VS.バーレーン
text by
木ノ原句望Kumi Kinohara
photograph byKiminori Sawada
posted2009/02/02 00:00
ゲームメーカーというのは誰もがなれるわけではないのだと、しかし、チームにはゲームメーカーの存在が必要なのだと、1月28日のアジアカップ最終予選バーレーン戦を見て、いまさらながら、そう思った。
ここ10カ月で4度目の対戦となった相手に、日本は0-1で敗れた。それも、バーレーンのマチャラ監督に「日本が試合を通して決定機らしい決定機をほとんど作れなかったのには驚いている」と言われるほど、大したチャンスも作れずに、だ。
立ち上がりから積極的に前へ出てきたバーレーンは、前線から激しいプレスをかけて日本のミスを誘い、中盤でボールを奪うと素早くつないで攻め込んできた。
そのこと自体は、特段、目新しいことでもない。バーレーンがホームでの試合で積極的に出てくることは、昨年3月に0-1で敗れた試合を含め、過去の対戦で経験済みだったはずだ。
だが、その相手のテンポのいい攻めに押され気味になり、流れを断ち切れないまま、日本は前半24分に失点した。右サイドのロングFKに、逆サイドに走りこんだFWイサがヘッドで合わせる。マーカー役のDF内田篤人に競り勝つと、ボールはジャンプしたGK川島永嗣の頭上を越えてゴール右上に吸い込まれていった。
その後も、日本は相手の激しいプレスに悩まされ続け、中盤で簡単に、それも攻撃に入ろうとするボールを失っては、相手にカウンターを許すばかり。玉田圭司、田中達也のFW陣までなかなかボールが届かず、ボールを持っても前を向かせてもらえない。
ワイドに開いた布陣で両サイドを封じられ、日本は攻め手を失った。代表経験の浅いGK川島にプレッシャーをかけていたあたりにも、バーレーンが日本対策をしっかり立てて準備してきた様子がうかがえた。
今回の日本には、しかし、そういう状況を修正し、展開に変化をつけることができる舵取り役がいなかった。MF中村俊輔は日程の都合で招集されず、MF遠藤保仁は負傷調整中でスタンド観戦した。
そこに欧州から合流したのがMF稲本潤一とMF本田圭佑だったが、ドイツとオランダでリーグ戦を闘っている彼らは、周囲の選手とのコンビネーションが十分ではなかった。特に、昨年6月のバーレーン戦以来の招集となった本田は、気負いから肩に力が入っていたのか、周囲とのリズムがいまひとつ噛み合っていないように見えた。
稲本は「コンディションのよさ、出足の速さで向こうが勝っていた」と言い、岡田監督は「フィットネスというより、スピード感、プレッシャーへの慣れが必要だった。久しぶりにプレッシャーのかかった試合で、その中での判断の遅さ、ミスが目立った」と振り返った。
試合を読んで、状況に応じて展開を組み立てるアイディアが不足していれば、攻めは手詰まりになる。それに、精神面での準備はどうだったか。
各組上位2チームが本戦に進めるアジアカップ最終予選では、よほどの取りこぼしがない限り、本戦は確実だろうという雰囲気が日本にはある。しかもバーレーンには、昨年6月のホーム、9月のアウェーとワールドカップ予選で連勝していた。さらに、2月11日には、岡田監督が「この1~2月で最も重要な試合」と公言してはばからない、ワールドカップ最終予選オーストラリア戦が控える。指揮官は、イエメン戦とバーレーン戦はそのための調整試合と位置づけていた。事実、貴重な調整の場でもあるのだが、そのことが、バーレーン戦への精神的アプローチに微妙に影響を及ばしていなかったか気になる。
技術的にも精神的にもチームを引っ張ることができる、柔軟な頭脳を持った存在。遠藤や中村俊輔が不在でも困らないような、そういう選手が台頭してきてほしいものだ。