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春爛漫の、センバツレビュー。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2006/04/12 00:00

春爛漫の、センバツレビュー。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 センバツ甲子園大会が4日に終わった。3月23日から2回戦が終わる30日まで甲子園球場で観戦したが、好投手の多い大会という印象が残った。優勝した横浜高に対してはこの2年の間で、評価がコロコロと変わった。'04年11月に発行された雑誌『ドラフト 2004』(日刊スポーツ出版社)の「スカウティングリポート」では、当時1年生だった川角謙(投手)、西嶋一記(投手)、福田永将(捕手)の3人を取り上げ、「西嶋たち1年生の甲子園出場のチャンスは'05夏、'06年春夏の3回。このうちどこかで横浜高は松坂大輔たちがいた'98年以降の優勝旗を手にするかもしれない」と書いたが、その後の神奈川大会や関東大会を見て、とても優勝などできそうもないと評価を下げた。素質に見合った成長をしていなかった、というのがその理由である。

 だが、彼らは今大会で目に見えて成長した。野手陣なら好投手に対しては、差し込まれるのを恐れて「スウェーして」「引っ掛けて」凡打を繰り返すというのが常だったが、今大会の準々決勝以降は、ボールを「呼び込んで」「利き手で押し込んで」、逆方向に流し打つバッティングができていた。とくに目立ったのが白井史弥(二塁手)、高濱卓也(2年・遊撃手)の2人である。高濱は昨年から評価が下がらなかった数少ない選手だが、白井は乱高下した。今センバツの1、2回戦を甲子園球場で見ても評価は高くできなかった。しかし、テレビで観戦した3回戦以降、白井のバッティングは目に見えて成長を遂げた。これこそが甲子園の魔力である。

 ちなみに、全力疾走の目安、「打者走者としての一塁到達4.29秒未満」「二塁到達8.29秒未満」「三塁到達12.29秒未満」を3人以上クリアしたチーム、1試合3回以上記録した選手は次の通りだ([ ]内数字は打席数、*印は左打者、△は両打ち)。

<3人以上クリアしたチーム>

◆清峰高(対岡山東商戦)=*広滝航(二塁手・[2] 4.25秒/二塁ゴロ)、佐々木伸之(遊撃手・[3] 4.25秒/遊撃ゴロ)、*池野和麻(右翼手・[3] 4.16秒/バント、12.19秒/三塁打)、△有迫亮(投手・[3] 8.28秒/三塁打のときの二塁通過)

◆東海大相模高(対京都外大西高戦)=*田中広輔(二塁手・[2] 4.22秒/振り逃げ、[3] 4.28秒/二塁ゴロ)、△竹内和宏(遊撃手・[3] 3.97秒/二塁ゴロ、[4] 7.90秒/二塁打)、*小玉雄介(左翼手・[1] 4.28秒/二塁ゴロ)、長谷川隼也(投手・[2] 4.10秒/バント)

◆東海大相模高(対清峰高戦)=*田中広輔(二塁手・[5] 4.19秒/二塁ゴロ)、*小玉雄介(左翼手・[1] 4.16秒/遊撃ゴロ、[3] 4.25秒/一塁安打)、*高山亮太(投手・[6] 4.29秒/二塁ゴロ)

◆延岡学園(対愛知啓成高戦)=*西本昌記(中堅手・[2] 3.88秒/バント、[3] 4.09秒/二塁ゴロ、[4] 8.12秒/二塁打、[5] 4.13秒/投手ゴロ)、小川竜也(右翼手・[1] 3.94秒/バント、[3] 3.97秒/バント安打、[5] 4.21秒/二塁ゴロ)、*津田悠介(捕手・[1] 4.19秒/投手ゴロ、[5] 4.19秒/二塁ゴロ)、*尾崎雅也(二塁手・[3] 4.00秒/一塁失策、[4] 4.12秒/バント)

<3回以上クリアした選手>

◆*小原徹也(関西高・捕手)対光星学院戦

 [2] 4.16秒(一塁ゴロ)、[3] 4.25秒(三塁野選)、[4] 11.87秒(三塁打)

◆西本昌記、小川竜也(ともに延岡学園)は前で紹介した。

また、捕手の二塁送球(イニング間)で2秒を切ったのは次の選手。

◆古跡勇太(成田高)対小松島高戦=1.93、1.97

◆真砂将広(高崎商)対日本文理高戦=1.84、1.91、1.94、1.97、1.93

◆南本裕文(京都外大西高)対東海大相模高戦=1.97

◆土井将平(北大津高)対日本文理高戦=1.96

 以上のことから最も機動力を前面に押し出して戦ったのは延岡学園、強肩捕手は真砂(高崎商)ということになった。ともに1回戦で散ったが、延岡学園は夏の大会の要注意校、真砂は来年ドラフトの要注意選手として記憶に刻みたい。

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