ジーコ・ジャパン ドイツへの道BACK NUMBER

2005年東アジア選手権VS中国戦(2005年8月3日) 

text by

木ノ原久美

木ノ原久美Kumi Kinohara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2005/08/05 00:00

2005年東アジア選手権VS中国戦(2005年8月3日)<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 北朝鮮戦の敗戦を受けて、ジーコ監督は先発メンバー総入れ替えという手段をとった。

 8月3日、韓国・大田(テジョン)で東アジア選手権第2戦を中国と戦った日本は、2−2で引分けた。

 ようやく勝ち点1を手にしたものの、4ヶ国で最下位という順位を挽回するには至らなかった。もう一試合の韓国対北朝鮮戦は4日、全州(チョンジュ)で行われる。

 ジーコ監督体制下での大掛かりな選手の入れ替えは、2003年6月のアルゼンチン戦での敗戦(1−4)を機にディフェンスラインを入れ替えて以来だが、先発11人を全て入れ替えるというのは記憶にない。

 一連のW杯予選やコンフェデレーションズカップで常に先発を守ってきたメンバーが、北朝鮮戦で「通常ならありえないプレー」を連発するのを目の当たりにして、監督は選手たちの疲労を実感したという。彼らを休ませる間に、新戦力を試すことになった。

 いわゆる“控え組”で構成された今回のチームは、速いテンポの仕掛けでチャンスを多く作り出した。特に、縦へ、ゴールへ、という意識が強く感じられ、あまり手数をかけずに前線へボールを運ぶプレーは、これまでのチームとは違う良さだろう。久しぶりに小気味のいい攻撃を見た気がする。

 ジーコ監督も「速さや思い切りのよさという若い人の特徴が出ていた」と評価した。

 特に、FW田中達也の強さと速さ、ゴールへの意識とラストパスの精度の高さは、日本代表チームのFWとして今後に十分期待を抱かせるものだろう。後半42分に自らのリバウンドに鋭く反応して、抑えの効いたライナーで同点にした1撃は見事だった。

 彼らの積極性で前半に作り出したチャンスから得点を奪えていたら違った展開になっていたはずだが、ゴールネットを揺らせないまま、日本はミスから前半で2失点を献上。攻撃面での良さが出た一方で、守備面で懸念していた急造チームの粗が出てしまった。

 前半37分の1失点目は、最終ラインとボランチの間のスペースを、MF趙旭日に使われて、ゴール前へ走りこんだFW李金羽にパスを通された。2失点目は、FKからのハイボールに日本はゴール前で競りあえずに、DF張永海にヘディングで決められた。

 その後も、身長180センチクラスの選手を揃える中国はCKやFKで高さを生かして、日本ゴールを脅かす場面が続いた。

 セットプレーでの約束事が守られない、マークの受け渡しがずれるということは、チームとして共有した時間の少なさによる影響とも言える。だが、チームが急ごしらえであるからこそ、なおさら徹底しなくてはいけない基本的な部分ではなかったか。それともそこまでの余裕はなかったということか。

 反撃を期してジーコ監督はMF本山に代えてFW玉田、FW巻に代えてFW大黒、MF村井に代えてMF三都主を投入したが、FW巻の交替は後半13分の茂庭のゴールで反撃ムードになり、お互いの呼吸を掴み始めていた頃だっただけに、少しもったいなかった気もする。

 いただけなかったのは、2−2にした後のプレー。刻々と残り時間がなくなる中で、パスの出しどころに悩み、バックラインでボールを回してばかりで誰も状況を打開できなかった。

 ジーコ監督は「初めてのチームながら、最初からチャンスを作り出し、積極的にゴールを狙った」と今回の先発メンバーを評価した。

 基本的には結果が出ている限りメンバーを替えないというポリシーを持つジーコ監督のもとでは、今回のようなことは珍しい。だが、その稀有な機会に新戦力を試すことができ、また、いつもの先発組の中には自分のポジション維持に危機感を持った者もいるはずだ。

 収穫も課題も見えたが、なによりも、選手に新たな刺激と意識が芽生えたのなら、試合の勝利は逃したものの、価値のある試合だったと言えるのではないだろうか。

 次は大会最終日の8月7日に大邸(テグ)で韓国と対戦する。

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