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レアル戦で判明した中村俊輔の悩み。
“アタッカー”として動くか否か? 

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中嶋亨

中嶋亨Toru Nakajima

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2009/09/14 12:30

レアル戦で判明した中村俊輔の悩み。“アタッカー”として動くか否か?<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

打ち合いに持ち込んだエスパニョ―ルだがレアルが一枚上手。

 後半に入ると試合の主導権は完全にレアルに移った。エスパニョールは後半開始から「代表戦で痛めた足首の状態が悪くなったため(ポチェッティーノ監督談)」中村を下げてデラペーニャをCHとして投入し、FWイバン・アロンソに代わって投入したコロを右SHに入れた。縦への突破力とパス精度の高いデラペーニャと高速ドリブラーのコロを入れたポチェッティーノ監督は、打ち合いの様相を呈し始めた前半の展開の中から「縦に早い攻撃」で勝機をつかもうとしたのだった。

 だが、それはレアルにとって好都合となった。エスパニョールの縦へと急ぐ攻撃は、前半のように複数の選手が連動したものではなく、レアル守備網を脅かすことはできなかった。逆にその攻撃を受け止めたレアルは、カカ、イグアイン、ベンゼマら突破力に長けたアタッカーへとボールを展開してエスパニョールゴールに迫っていった。そして後半33分、左サイドを攻め上がったレアルは、カカがペナルティエリア内で相手DFを一人かわしてから中央に走り込んできたグティへとパス。グティはこれをきっちりとゴールに流し込み、レアルが点差を2点と拡げた。

好機を作り続けた中村はもっと奔放にプレーするべき?

 攻勢に打って出ようとした策が裏目に出たエスパニョールはこれで完全に意気消沈。運動量と注意力が落ち、ポジショニングが甘くなると、前線と最終ラインとの間をコンパクトに保つことができなくなり攻守は完全に崩壊した。そして試合終了間際にはFWロナウド(後半19分にベンゼマと交代出場)がダメ押しとなるゴールを決めて、0対3で試合は終了した。

 完敗したものの、試合序盤の主導権争いでは流れを引き寄せていたエスパニョール。その中でも周囲の動きを連結させるパス捌きや、正確なFKによって中村はチームに貢献していた。

 前半は周囲を動かすつなぎ役に徹した分、試合展開が開放的になっていった後半にはより積極的に仕掛けていくことが予想された。また、試合後にレアルMFシャビ・アロンソが「中村はパス精度が高く、ミスの少ない選手という印象。FKも正確で、周囲の選手はプレーし易いはずだ」と語ったように、中村の前半のシンプルなパス捌きはレアル守備陣にパスのイメージを刷り込んでいた。

 中村自身も試合後にこう語っている。

「前半は無理をしなかった。本当はベルドゥがやっていたようなプレー(ポジションに捉われずスペースに出入りして頻繁にボールを触るプレー)をしたいが、今は違う役割をしている。もっとアタッカーとして動いたほうが良いのか、難しいところ。キャラを変えるつもりはないけど、自分のプレーとチームのプレーをあわせないといけない」

後半はアタッカーとしても動くつもりだった!?

 この言葉からも読み取れるように、中村の中でも後半は前半とは違うプレーで仕掛けるイメージがあったはずだ。相手に刷り込まれたパスのイメージを利用して先手を取れば、より決定的な仕事をやってのけるだけのキック精度や視野の広さを備えていることを前半45分だけで中村は示していた。

 彼のイメージがピッチ上で具現化され、より決定的なプレーが成される可能性は十分にあった。だが、中村は後半を戦わずしてレアルとの初対決を終えた。

 これで開幕から2連敗となったエスパニョールは、2試合連続無得点。次節、エスパニョールがゴールを挙げ、勝利するにはレアル戦の前半のような中村だけでは物足りない。チームを動かす役割をこなした上で、勝負どころを見極め仕掛けていく。「もっとアタッカーとして動いたほうが良いのか、難しいところ」と悩んでいる猶予は、中村にもエスパニョールにも残されてはいない。

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マウリシオ・ポチェッティーノ
中村俊輔
ラウール・タムード
ダニエル・ハルケ
コロ
ルイス・ガルシア
イバン・デラペーニャ
イドリス・カメニ
エステバン・グラネロ
グティ
カカ
エスパニョール
レアル・マドリー

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