ベースボール・ダンディBACK NUMBER

野村・楽天、好調の秘密!?
飛ぶボールと飛ばないボール。 

text by

田端到

田端到Itaru Tabata

PROFILE

photograph byTomoki Momozono

posted2009/09/14 13:30

野村・楽天、好調の秘密!? 飛ぶボールと飛ばないボール。<Number Web> photograph by Tomoki Momozono

シーズンの流れを読んだ使用球の選択がある?

 それでも野村楽天のような小技を駆使するチームが、前半は飛ばないボール、後半は飛ぶボールを使うことは、理にかなっている。

 普通に考えて、飛ぶボールは長打力が武器のチームにプラスに働き、飛ばないボールは1点を争う緻密な野球の得意なチームに向く。

 また、こうも言えるだろう。1点を争う細かい野球は、シーズン前半のほうが機能しやすく、投手陣に疲れが出て荒っぽいゲームが増えるシーズン後半は機能しにくい。実際8月、9月に入ってからリリーフ陣の崩壊するチームが何と多いことか。

1点を守りきる野球をしたチームほど後半大失速しがち。

 昨季の阪神、今季のヤクルトのように、前半戦はきっちり1点を守り切る野球が出来ていたチームほど、その勝ちパターンが崩れると歴史的な大失速を見せる。

 逆に巨人のような打撃のチームは、毎年のように、この時期、上り調子になる印象がある。投手陣が苦しくなるシーズン後半に向くのは、1点を争う緻密な野球ではなく、豪快に打ち勝つ野球なのだと思う。

 細かい野球が機能しないなら、飛ばないボールを使うメリットもなくなる。自軍の貧打が際立つだけだ。ならばいっそ飛ぶボールにして、目指す野球の質を変えてしまえばいい。それは両刃の剣となるが、うまく運べば、今の楽天のような追い風をチームにもたらす。

野村・楽天の采配はまさに「赤壁の戦い」!

 三国志の赤壁の戦いを描いた映画『レッドクリフ』には、金城武の演じる諸葛孔明が風向きの変化を読み、戦局を大逆転へ導く場面があった。

 風の変わり目を読めるのが優れた戦術家であり、それは野球にも通じる勝負の基本でもある。使用球の変更もまた、野村克也という老獪な策士の戦術のひとつであり、その実行隊長が山崎武司だったのだ! という妄想ストーリーをでっち上げてしまうのも、それはそれで楽しいのではないかという気がしている。

 あ、そう言えば山崎武と金城武は、字がちょっと似ているし、楽天のユニフォームはレッドに近いエンジだ。無理やりですが……。

BACK 1 2
江夏豊
野村克也
山崎武司
東北楽天ゴールデンイーグルス

プロ野球の前後の記事

ページトップ