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インテル・バッシング。 

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酒巻陽子

酒巻陽子Yoko Sakamaki

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2006/03/09 00:00

インテル・バッシング。<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 7万人の大観衆をのみ込んだオリンピックスタジアムにどよめきが響き渡る。3月5日に行われたローマ−インテル戦の後半44分、コーナーキックからインテルDFマテラッツィの同点ゴールが決まった瞬間、イタリア中が注目したセリエAの連勝新記録は、「11」で幕を閉じた。

 1960−61年シーズンにレアルマドリーが成し遂げた欧州リーグ最多連勝記録(15連勝)に、追いつき追い越せと必死で戦ったローマだったが、試合終盤で攻め込んだインテルの前に力尽きた。先月バルセロナの連勝が、14でストップしたこともあって、45年ぶりの記録突破へ皆が期待を寄せていただけに悔しい結果となった。

 痛恨の失点で12連勝はならなかったものの、スパレッティ監督率いるローマは、トッティを欠いた不安感などみじんも出さず、攻撃力では代表クラスのアタッカーを揃えたインテルを遥かに上回っていた。本来は右サイドが定位置のマンチーニがトップラインでプレーする。さらにスパレッティ指揮官はタディとペロッタを1.5列目に指名し、器用さが売り物の両選手に絶対の信頼を置いた。FWの代役を務めたこの3人のジョカトーレが徹底してインテルのディフェンスラインの裏を攻め続け、「新しい形の攻撃」を披露したのである。

 一方、インテルの内容はお粗末だった。共通意識にズレがあり、ストライカーのキレのなさは深刻だった。

 「攻撃への展開に問題がある」

 歴史的なローマの連勝を止めた腹いせもあったのか、翌日のマスコミはインテルを酷評。週明けから「インテル・バッシング」がスポーツ紙を賑わせた。

 1カ月前の2月5日、キエボ戦を白星で飾ったインテルは2位に浮上。首位のユベントスに8ポイント差とスクデッド争いに踏み入れたものだったが、最近はFWの役割分担が非常にあいまいなため、前線でのプレーにミスが目立つ。ローマ戦では3人のFWをピッチに送り込んだものの、厚みのある攻撃と呼ぶにはほど遠い内容。執念でもぎとった1点も、皮肉なことにディフェンダーによるものだったことが、よけいに「点の取れないFW」を目立たせた。

 ローマが見せた「攻め」、つまりスピードをいかしたサイド攻撃が「新しい形の攻撃」として機能しただけに、インテルの戦術は「古い」、「つまらない」。内容がよければ結果もついてくるということにインテルのマンチーニ監督が気づいていないのがそもそもの原因かもしれない。課題を克服する方向性を監督が見つけ出さねば、チームの最低限の目標である「試合に勝つこと」さえ達成されないだろう。

 DFが主役となった一戦。FWを抱え込むより、攻めのカードを増やすことが結果的には勝利につながる。監督にもそんな工夫が欲しい。

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