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合言葉はストップ・ベッテル!!
ハミルトンのミラクル勝利の裏側。 

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尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

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photograph byMasahiro Owari

posted2011/04/20 10:30

合言葉はストップ・ベッテル!!ハミルトンのミラクル勝利の裏側。<Number Web> photograph by Masahiro Owari

グリッド上で、パドック内と同じような作業を猛烈な速さでこなすクルーたち。このままスタートできないのではないか……とも思われた、絶体絶命のピンチだった

 “1 minute to go!! 1 minute to go!! 59 seconds, 58 seconds……”

 スターティンググリッド上で華やかなセレモニーが繰り広げられているころ、そのグリッドに着くことができないドライバーがいた。ハミルトンである。スタート30分前にピットレーンがオープンとなり、レースに参加するマシンが続々とガレージを後にして自分のグリッドへ向かう中、ハミルトンのマシンだけが1台、マクラーレンのガレージの中にとどまったままだったのだ。

「エンジンを始動させたときに減圧バルブが作動して燃料が大量に漏れ出てしまい、周辺機器を汚してしまった」(フィル・プルウ/チーフレースエンジニア)からだった。そのため、チームは一度、カウルを開け、エンジン周辺機器を取り外して洗浄しなければならなくなった。それは「最悪、レースへ参加できないかもしれない」(プルウ)と思うほど、深刻な状況だった。

スタート直前、秒単位のカウントダウンで緊急整備!!

 レギュレーションでピットレーンはスタート15分前に閉鎖される。もし、間に合わなければピットレーンからのスタート。それは最後尾スタートよりもおおきなハンディキャップ。そのため、マクラーレンのスタッフはピットレーン閉鎖までの時間をカウントダウンして、ハミルトンをなんとかグリッドからスタートさせようと努力するのである。

 そして、その声が「分単位」から「秒単位」に変わった段階で、プルウはハミルトンをピットアウトさせることを決断。ハミルトンのマシンはカウルが完全に取り付けられていない状態のまま、とりあえずコースを1周してホームストレート上にまでたどり着き、メカニックに押されながら自分のグリッドに着いた。

 これでハミルトンは予選で獲得した3番手からスタートする権利を得たが、まだ作業は完了していなかった。周辺機器を取り外した際、テレメトリーのケーブルも外したためテレメトリーがまったく機能しない状態だったからである。

 グリッドにマシンを止めたそばから、大急ぎで作業を再開するマクラーレンのスタッフ。それはまるで、ハミルトンのグリッドだけが、すでにレースを戦っているかのような緊迫感漂う光景だった。

【次ページ】 ハミルトンの切り札は温存した新品のソフトタイヤ。

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