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呑みこまれた“レジェンド”の郷愁。
UFCのリアルに屈した山本“KID”。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byGetty Images

posted2011/02/12 08:00

呑みこまれた“レジェンド”の郷愁。UFCのリアルに屈した山本“KID”。<Number Web> photograph by Getty Images

デミトリアス・ジョンソンのリズムあるパンチの前に、為す術がなかった山本“KID”徳郁

伝説のファイター達にも世界最高峰の頂は未だ見えず。

 過去を“養分”として、UFCは巨大化し続ける。

 “最強”は常に更新され、どれほど有名な選手であろうと現在進行形の過酷な生存競争にさらされる。2006年には、UFC初期の礎を築いたホイス・グレイシーが当時のウェルター級王者マット・ヒューズに惨敗した。日本で伝説を築いたミルコ・クロコップやアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、五味隆典も手痛い敗北を喫している。

 KIDもまた然り。オクタゴンに足を踏み入れた瞬間、彼は“前座枠”からMMAの世界最高峰に挑む一登山者となったのだ。

 レジェンドとは、言い換えれば幻想だ。過去に築き上げられた幻想を“食う”ことで、UFCは現在進行形のダイナミズムを容赦なく突きつけ、過去への郷愁を断ち切ってみせる。ファンの要望によってfacebook中継が実現した事実と、それだけネームバリューのある選手が完敗を喫したという事実。二つの事実のギャップこそが、UFCという山の高さを物語っている。

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山本"KID"徳郁
デミトリアス・ジョンソン

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