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ドラフト“史上最多6人指名”富士大のナゾ…39歳監督が語った“超独自戦略”とは?「地方・雪国・非名門」でも「逆に有利なんです」断言したワケ
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/17 11:01
オリックス1位の麦谷祐介(右から3人目)ら6人が指名を受けた富士大。なぜ岩手の一大学からこれほどプロ選手が生まれたのだろうか?
投手の具体例は、ソフトバンクから3位指名を受けた安徳駿だろう。YouTubeに投稿されていた安徳の投球動画を見た安田が、「これは良くなりそうだ」と直感してコンタクトをとった。
「安徳はさっき言った“指先の感覚”が抜群に良かったんですよ。角度、球質、フォームのバランス……。投球動画を見た瞬間でしたね。ただ当時は130km前後と球速が足りなかったので、そこがどこまで伸びるかどうか。
140kmだと社会人でも厳しいかもしれませんが、140km台後半まで伸びればプロにいけるくらい球質はよかった。長島(幸佑/ロッテ育成3位)も映像がきっかけでリストに入れました。ちょうどコロナ禍で直接見るのが難しかったので、大量の動画を見ていたんです。そのなかで目についたのが安德と長島の2人でした」
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野手の場合は、オリックス1位の麦谷がそれにあたる。入学前から、走力と守備力は「何もする必要がない」ほど飛び抜けていた。だが、打撃面には明らかに課題がある。逆に考えれば、4年間でそこを重点的に強化できれば、プロレベルの外野手に育てることができる、という計算だ。
「坂本(達也/巨人育成1位)にしてもそうです。1年の時点で、キャッチャーとしてのスキルはある程度揃っていた。だからバッティングを中心に強化した。正直、全部の能力を伸ばすのは難しいんですよ。単純に時間が足りない。でも手をつけなくていいところがあれば、他の能力を徹底的に伸ばすことができる。最初から尖った選手を取るという方針なので、入学時点でまとまった選手はいないんです」
選手の“目利き”に絶対の自信を持つ安田は、さらりと手の内を明かしていく。だが、いくら理屈としては正しくても、イメージ通りに能力を伸ばすのは簡単なことではない。
冬場に屋外で練習できないのは…「逆に有利」?
加えて、富士大には関東や関西の大学と比べて決定的に不利な要素がある。降雪地域のため冬場にグラウンドを使用できず、練習メニューが限られるという点だ。その“縛り”について水を向けると、意外な答えが返ってきた。
「有利なんですよ、逆に」
屋外で練習できないことが有利? いったい、どういうことなのだろうか。
<次回へつづく>