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三冠に王手。國學院大學陸上部とアディダスは大学駅伝のゲームチェンジャーになる。
posted2024/12/19 11:30
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Takuya Sugiyama
「キャプテンの僕に対して『勝ちに行きますから』とか『負けませんよ』なんて、後輩たちが言ってくるんです。そんなチームはなかなかないと思います」
國學院大學の主将、平林清澄のこんな一言に、チームが快進撃を続ける所以があるのだろう。
『歴史を変える挑戦~EP.3~』をチームスローガンに掲げる今季、國學院大は出雲駅伝で5年ぶりに優勝を果たすと、全日本大学駅伝では初優勝を飾った。いずれも、序盤で好位置に付け、後半に逆転するというレースパターンで勝利を手にした。
「今年の國學院の強みは、“繋ぎ”の区間が強いこと。繋ぎの区間でエース級の走りができる選手がチームの戦況を大きく変える。まさにゲームチェンジャーになっているんじゃないかなと思います」
平林がこう説明するように、他校が手薄になる区間に強力な選手を配して、一気に戦況を好転させた。
監督から「野中のほうが強いだろう」と
出雲、全日本ともにその役割を担った代表格が2年の野中恒亨だ。今季が大学三大駅伝デビューとは思えないほど堂々とした走りを見せている。出雲では20秒あった先頭との差を9秒にまで詰め、4区区間賞。全日本は5区で、先頭との1分27秒差を41秒まで詰めた。留学生をも破って、出雲に続き区間賞に輝いた。
「どっちも繋ぎ区間ですし、デビュー戦もそんなに緊張することもなく、リラックスして楽しんで走ることができました。
他大学の選手たちに比べて『野中のほうが強いだろう』と監督から言ってもらっていたので、自分のところで抜く、追いつくのが役割だと思っていました。自分自身としては悪くはなかったかなと思うんですけど、たまたまゲームチェンジャーのように見えているだけかなと思います」
野中は謙遜するが、前田康弘監督の起用に見事に応え、逆襲の狼煙を上げる活躍を見せた。
野中がもたらした勢いを受けて、出雲は5区で、全日本はアンカーで、國學院大はついに先頭に立った。ともにその場面を任されていたのが上原琉翔だった。
「冷静に判断できるのが自分の強み」と言うように、一気に勝負を仕掛けるのではなく、落ち着いてレースに入った。
勝機は何度も訪れるものではない。その一瞬を見極める勝負勘が光った。
「みんなが頑張ってくれて、あの位置でタスキをもらったからには、僕は1位に躍り出るだけでした。みんなには少し楽をさせてもらったなと思います」
勝負所を見逃すことなく、先頭を奪った。
そして、平林はエースとしての役割を務め上げた。