第101回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
〈中央学院大学〉「本番が楽しみです」チームメイトに火をつけた主将・吉田礼志(4年)が見せてきたエースの背中
posted2024/12/16 10:01
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Nanae Suzuki
箱根駅伝の予選会はブレーキもなく、危なげなく5位で通過。中央学院大学の大黒柱である吉田礼志(4年)は狙い通り日本人選手トップでフィニッシュし、2大会連続本選出場に大きく貢献したが、その表情は冴えなかった。
「チームとして1位通過を目指していたので、悔しさのほうが大きいです」
安堵感はなく、本大会行きの切符は当たり前と言わんばかりに「仲間の力を信じていましたので」と言葉に力を込めた。今季の初めに掲げた箱根駅伝の目標は6大会ぶりのシード権にとどまらず、総合5位以内。4年目は主将の重責も担い、果たすべき役割は大きい。正月の大舞台に向けて、自らに言い聞かせるように覚悟を口にする。
「チーム全員で立てた目標に対し、責任を負うのがキャプテン。もちろん、エースとしての責務もあります。僕は絶対に達成したいと思っています」
失敗から芽生えたエースの自覚
箱根駅伝の厳しさはチームの誰よりも知っている。ルーキーイヤーから花の2区に抜擢されたが、区間18位と洗礼を受けた。2年目は足でチームを引っ張っていくつもりだったものの、箱根駅伝予選会で脱水症状を起こしてまさかの失速。川崎勇二監督から課されたタイムの貯金をつくれず、ショックに打ちひしがれたという。
「数年前までは5年連続でシード権を取っていた大学なのに予選会落ちを経験し、エースの自覚がより芽生えました。本当に悔しくて、自分もチームも変わらないといけないなって。あの日以来、自分だけではなく、チームのことを考えて練習するようになりました」
仲間よりもジョグの量を増やし、設定タイムも上げた。周囲には背中で見せることを意識してきた。3年生となる前の2023年2月にハーフマラソンで日本人学生歴代2位の1時間00分31秒をマークし、同年12月には10000mで27分47秒01と自己記録を更新。いまや学生トップランナーとして君臨しているが、「誰よりも練習する」と川崎監督が感心するほど、地道に練習に取り組んでいる。故障で離脱することもほとんどなく、黙々と努力を重ねてきたという。
「チームメイトに『礼志だから27分台を出せる』と思われたくないんです。監督も選手たちの前で『吉田は才能ないけど、考えて練習を積んできた』と言いますから。『俺たちも積み重ねれば、できる』と思ってほしくて。僕は不器用で話すのも得意ではないから、どこまで思いが伝わっているかは分かりませんけど」