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「タスキの重さを力に」“エンジ”の名門を牽引する早稲田大学・伊福陽太と立命館大学・村松灯は、最後の大学駅伝で高い牙城を崩せるか 

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和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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posted2024/12/16 11:00

「タスキの重さを力に」“エンジ”の名門を牽引する早稲田大学・伊福陽太と立命館大学・村松灯は、最後の大学駅伝で高い牙城を崩せるか<Number Web> photograph by AFLO

早稲田大学4年の伊福陽太(写真左)と、立命館大学4年の村松灯

村松 いや、全然……。

 駅伝の優勝は目標にしていましたが、正直、1年目も2年目も勝てるなんて思ってもいませんでした。3年目に“来年につながる駅伝にしよう”ということに挑戦し、結果は3位でしたが、(トップとの)タイム差が縮まったので手応えを感じ、本気でやったら来年は優勝できるかもしれないと思うようになりました。優勝だけを目指してできたのは、今年が初めてでした。

 チームは競技レベルが上がっていくにしたがって、雰囲気もどんどん良くなっていきました。1年時はチーム内の競争があまりなかったのですが、今はメンバーになるための競争がとても激しいです。その競争をした上で選ばれた6人が走ったから、今年は勝てたんじゃないかなと思います。

伊福 全日本大学女子駅伝、見ていました。寮の食堂に大きいテレビがあるんですけど、練習後にお昼ご飯を食べながら見ていました。京都の大学だし、高校の同期や後輩など知っている選手も走っていたので、立命館を応援していました。

村松 ありがとうございます! 私たちも同じで食堂にテレビがあるので、出雲も全日本も「どこが勝つんやろ」って話しながら、みんなで見ていました。

伊福 下馬評通りなら、他の大学が優勝だと思われていたと思うんです。そんななか、立命館の選手は1区から全く崩れない走りをした。それが優勝という結果につながったのかなと思います。

 男子の大学駅伝も、今季は三強と言われています。そんななか、僕らは三強の一角を崩すことを目標とし、今年はスタートしました。立命館を見て、自分たちがいかに崩れない走りをするかが重要なんだなって思いました。

――駅伝ではタスキに重みを感じたり、タスキに力をもらったりすることはありますか。

村松 そうですね。今年の関西学生女子駅伝ではアンカーを走らせてもらったのですが、みんなの汗が染み込んでいて(物理的にも)重かったし、タスキを受け取って肩から掛けた時に、順位的にはきつかったんですけど“こんなところで諦められへんな”って思えました。“タスキの重み”ってよく言うけど、タスキがあるから、自分の持っている力以上のものを振り絞れるんだと思います。

伊福 僕も、タスキに力をもらうことはあると思います。個人的には、タスキをもらう瞬間が好きです。前の走者が最後に頑張って走る姿を見て、自分も“1秒でも早く次の人に渡したい”と思います。

高い牙城への挑戦

――それぞれ、残すは年末年始の駅伝だけとなりました。そこに向けての目標をお聞かせください。

伊福 三強の一角を崩すというチーム目標をぶらさずにやっていきたい。出雲と全日本が終わって、それぞれに良かった点、悪かった点がありました。今は、走った選手も、そうじゃない選手も、それぞれが変わるっていう意識を持ってやっていると思います。全日本では、早稲田の定位置と言われる6位をなんとか抜け出せたので、それをきっかけにして、目標に向かっていきたいです。

 目標を達成するには、全員が抜かりのない走りが必須。そうなると、区間上位で走ることは絶対条件になってきます。個人では、区間10位、区間5位ときているので、次は区間賞を目指したいと思っています。

村松 全日本で勝つことができましたが、立命館は全日本と富士山の両方の駅伝で優勝することを目標にしています。みんな、“ほんまにできるのかな”と思いつつ目指してきたと思うんですけど、全日本を勝ったことで(二冠への)手応えはありました。富士山はチームとして絶対優勝。全日本の時よりもさらに強くなったチームで優勝して、もう一回みんなで喜びたいです。

 個人的には、富士山ではまだ一回も区間賞を獲っていないので、今年こそは絶対に区間賞を獲って、チームを勢いづける走りをしたいです。

【次ページ】 二人の可能性を引き出す武器

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