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酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
沢村賞の選考基準問題「先発完投10以上」「中6日は甘い」苦言が常態化してるが…過去42年の「項目達成数」を比べると時代錯誤なのでは
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/04 11:00
沢村賞の選考を終え、記者会見する堀内恒夫委員長(中央)ら選考委員会メンバー
だから軽々に中身を変えたくないというのは理解できる。ただ昨今の沢村賞選考は、発表の場で選考の委員から「もっと先発完投を目指せ」「中6日は甘すぎる」など苦言を呈されることが常態化している。
しかし、沢村賞が制定された1947年から77年も経って、野球は劇的に変化している。昔の基準に合わないからともっと頑張れ、と言われてもそもそも「がんばる方向性」が異なっているのだから、どうしようもない。
「選考基準」過去42年の平均クリア数は?
沢村賞の問題点は、せんじ詰めれば「選考基準」にある。今から42年前の1982年に定められたものだ。
・登板試合数:25試合以上
・完投試合数:10試合以上
・勝利数:15勝以上
・防御率:2.50以下
・勝率:6割以上
・投球回数:200イニング以上
・奪三振:150個以上
この全項目をすべて満たす必要はないとはいえ――沢村賞受賞者はできるだけ多く選考基準をクリアしている方が良いのは言うまでもない。1982年以降、受賞者のクリア数は以下のようになっている。10年ごとの平均項目達成数とともに見ていく。
〈1980年代〉
1982年/北別府学(広島)7
1983年/遠藤一彦(大洋)6
1984年/該当者なし
1985年/小松辰雄(中日)6
1986年/北別府学(広島)7
1987年/桑田真澄(巨人)7
1988年/大野豊(広島)4
1989年/斎藤雅樹(巨人)7
1980年代の平均項目達成数:6.28
〈1990年代〉
1990年/野茂英雄(近鉄)6
1991年/佐々岡真司(広島)7
1992年/石井丈裕(西武)4
1993年/今中慎二(中日)7
1994年/山本昌広(中日)5
1995年/斎藤雅樹(巨人)6
1996年/斎藤雅樹(巨人)5
1997年/西口文也(西武)6
1998年/川崎憲次郎(ヤクルト)4
1999年/上原浩治(巨人)6
1990年代の平均項目達成数:5.60
〈2000年代〉
2000年/該当者なし
2001年/松坂大輔(西武)5
2002年/上原浩治(巨人)5
2003年/井川慶(阪神)5
2003年/斉藤和巳(ダイエー)4 ※2人受賞
2004年/川上憲伸(中日)4
2005年/杉内俊哉(ソフトバンク)5
2006年/斉藤和巳(ソフトバンク)6
2007年/ダルビッシュ有(日本ハム)7
2008年/岩隈久志(楽天)6
2009年/涌井秀章(西武)7
2000年代の平均項目達成数:5.40
〈2010年代〉
2010年/前田健太(広島)6
2011年/田中将大(楽天)7
2012年/攝津正(ソフトバンク)5
2013年/田中将大(楽天)6
2014年/金子千尋(オリックス)5
2015年/前田健太(広島)6
2016年/K・ジョンソン(広島)4
2017年/菅野智之(巨人)5
2018年/菅野智之(巨人)7
2019年/該当者なし
2010年代の平均項目達成数:5.66
〈2020年代〉
2020年/大野雄大(中日)3
2021年/山本由伸(オリックス)5
2022年/山本由伸(オリックス)5
2023年/山本由伸(オリックス)4
2024年/該当者なし
2020年代の平均項目達成数:4.25