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「悪くないんだけどね…」J1町田ゼルビアなぜ失速? ロングスロー、水かけ論争だけじゃない今注目すべき黒田マネジメントの真価 

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篠幸彦

篠幸彦Yukihiko Shino

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photograph byJ.LEAGUE

posted2024/09/13 17:02

「悪くないんだけどね…」J1町田ゼルビアなぜ失速? ロングスロー、水かけ論争だけじゃない今注目すべき黒田マネジメントの真価<Number Web> photograph by J.LEAGUE

J1リーグ2位で残り9節を迎えるFC町田ゼルビア。日本代表の中山雄太(中央)らを補強し、“J1初挑戦で初優勝”を狙う

 そもそも“町田らしさ”とはなにか。「失点をゼロに抑え、一本中の一本を決める」が町田のコンセプトである。「1-0が町田の勝利の方程式」と黒田監督は口にしてきた。それを可能にしてきたのが、攻守にわたるチームの設計と実行力だ。

 守備ではまず敵陣深くで2トップのチェイシングをスイッチに、チーム全体のハイプレスで襲いかかりボールを奪いに行く。

 中央にボールを運ばれたら素早く後退し、コンパクトな守備ブロックを形成。自陣深くでは中央を締めて、クロスを簡単に上げさせない。ペナルティエリアでは必ず人を捕まえ、数的優位を作らせず、確実に跳ね返す。やることはシンプルでもディテールへのこだわりはとにかく厳しく、まずは失点ゼロで抑える守備が町田のベースである。

 そのハイプレスから攻撃ではショートカウンターが定石。そして、最も脅威なのが長身FWオ・セフンだ。194cmの分厚い体躯を生かした空中戦は圧倒的で、対策しようがない。今季の町田を象徴する存在である。そのオ・セフンで前線に起点を作り、セカンドボールの回収からサイドや裏のスペースを突く。

ロングスロー、水かけ…対戦相手の本音は?

 オ・セフンを警戒し、中央を締めてきたらサイドへロングボールを送り、サイドで起点を作る。クロスからの得点は得意なパターンだ。たまらず相手がタッチラインにボールを切れば、ロングスローやCKが待っている。セットプレーでの攻撃も町田の強みの一つであり、狙いである。

 第8節、ヴィッセル神戸は町田との接戦を2-1で制した。殊勲の決勝点を決めた武藤嘉紀は大勢の記者に囲まれながら勝因をこのように語った。

「僕らが普段相手に合わせることはしないんですけど、相手の良さを消しながらカウンターに出ていく。そこが功を奏したと思う」

 自分たちのスタイルを貫き通してJ初優勝を成し遂げた王者が、それを曲げてでも町田のロングボールやロングスローからの圧力を警戒し、勝ちにいっていた。

 町田はロングスロー時にタオルを使ったり、PK時にボールに水をかけたりする行為など、なにかと批判に晒されるシーンが目立つが、実際に対戦した武藤は「やることが明確で、全員がハードワークできる良いチームですよね。この世界は勝てればそれが正義。素晴らしいサッカーだと思います」と賞賛する。それは他の相手チームも同様で、町田のサッカー自体を否定する選手や監督はいない。

【次ページ】 揺らぎ出した「町田らしさ」

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