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「サッカー選手なので、タイトルをとることは目標です。ただ…」遠藤航が抱く人生の目的。38歳になったときに一緒にプレーしたい選手とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
posted2024/09/06 11:00
リバプールの入団会見時に笑顔を見せる遠藤航
「別に何か(夫婦間での家事の分担)を決めているわけでもないし、気づいたらやってあげるとかです。(夫婦間には)良いバランスというのがあると思うんですよね。俺の感覚と、奥さんの感覚とは違うので、そこで上手い具合にバランスをお互いに考えながらやっています」
自分のことだけではなく、家族のことを第一に考えながら遠藤は生活をしてきた。それでいて、本業であるサッカーでもめざましい成果を残してきた。
4人の監督の下でキャプテンを任せられた遠藤が持つ、プロフェッショナルな姿勢
名門ながら2部に落ちていたシュツットガルトをわずか1シーズンで1部リーグに復帰させると、昇格初年度から2シーズン続けて、ドイツサッカー界で最も重視されるデュエル(一対一の局面での争い)の勝利数でリーグトップを記録するほどの活躍を見せた。シュツットガルトでの3シーズン目からは2シーズン続けて残留争いに巻き込まれたが、シーズン最終戦で残留を決める劇的な勝ち越しゴールを決めるなど、中心選手としてチームを牽引してきた。
何より、シュツットガルトでの3シーズン目でキャプテンに就任すると、そこから計4人の監督の下でキャプテンを任された。異国の地で大役を任されるだけでも偉業だが、監督が代わってもそのポストにふさわしいと見なされることにはもっと価値がある。当時のシュツットガルトもそうだったが、監督が交代する理由の多くは、チームの成績が伸び悩んでいることだ。そのため、新しい監督が来て、キャプテンを代えることで、チームの空気を変えようとすることはよくある。にもかかわらず、遠藤は一貫してリーダー役を任された。
歴代の監督たちが口を揃えたのは、遠藤にはチームの勝敗に対しての責任感があり、練習から常にプロフェッショナルな姿勢で取り組んでいるために他の選手の模範となるという事実だ。今シーズンのリバプールでのリーグ開幕戦で遠藤はピッチに立つチャンスを与えられなかったのだが、それでも試合終了後には自身とポジションを争うライバルたちをねぎらいにいき、辛口のイングランドメディアをうならせている。
遠藤のチームに対する責任感は相当なもので、Jリーグの湘南ベルマーレにいた頃にこんなことを言われたこともあるという。
「プロになってすぐの、18~19歳の頃に、監督から『責任を感じすぎるな』と言われましたた。失点や自分のプレーに常に責任感を持っているので、そういうアドバイスで気持ち的に楽になりました」
ドイツ語を決して流暢に操るわけではなかった遠藤がドイツでキャプテンを任された源流はそんなところにあった。
30歳で手にしたプレミアリーグへの挑戦権
シュツットガルトではチームの中心として素晴らしい活躍を続け、キャプテンを任されるほどの存在になっていた。だからこそ、2023年の8月、30歳のときに中学生の頃に抱いた目的を果たせるチャンスがついに訪れた。遠藤の獲得を熱望したのが、憧れを抱き続けていたプレミアリーグの超名門リバプールだった。
ただ、すでにシーズン開幕後だったため、そこまで悩んでいる時間はなかった。移籍についてのハードルは、高いように見えた。
いくら選手が移籍を望んだとしても、所属するクラブが許可を出さなければ実現はしない。実際、同時期には、シュツットガルトの反対にあって移籍できないチームメイトもいた。まして、遠藤はキャプテンを務めている選手だ。交渉は一筋縄では行かないようにみえた。