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柳田将洋「僕も久しぶりに落ち込んだ」男子バレー“波乱の開幕”…いつもと何が違った?「39歳グロゼルの強烈サーブ、ドイツが素晴らしかった」
text by
柳田将洋Masahiro Yanagida
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2024/07/28 11:03
ドイツ戦後、キャプテン石川祐希を中心に輪をつくったバレーボール男子日本代表。波乱のスタートとなった
たとえばトスが近い時や相手のブロックが揃った時には、一本で決めようとせず、無理せずつないで攻めていくという、いわゆる“日本らしさ”というプレーができていなかった。数字を見ても被ブロック(18本)が多かったですね(日本のブロックポイントは8本)。
あくまで個人的な印象ですが、これまでの試合では攻め急がずに場面ごとにベストなプレーをチョイスできることが、他国と違う、日本のクールさでもありました。でもドイツ戦では、これまでならばリバウンド(チャンスボールが返ってくる様にブロックに打球を当てる)を取っていたところでも高橋藍選手が3枚ブロックに対して無理やり勝負にいってしまったシーンも多く見えました。
多少苦しい状況でも、高さで打開するチームとは違い、日本は速い展開のスタイルで幅や手数の多さで勝負するのが武器。でもドイツ戦では相手ブロックに対して日本の攻撃が圧倒的に数的不利であるにもかかわらず、勝負にいった。いい言い方をすればガッツがあるとも言えますが、少し悪い言い方をすればやや博打っぽい。そんな印象を受けました。
正確な日本だからこそ、目立ったブレ
オリンピックだからなのか、会場が変わったことなのか、要因はいくつかあると思います。これまでは誰がトスを上げても精度が高かった2本目のボールもドイツ戦では少しブレがあり、高さよりも速さが先行するシーンがありました。正確さが武器である日本だからこそ、その些細なブレも目立っていました。
ただ、繰り返すようですが、とにかくドイツが素晴らしかった。バレーボールはいくら自分たちがよくても、相手がそれ以上によければ負けることがあります。劣勢になっても戦い方を修正して、アジャストしていくのが日本の強さで特徴なのですが、おそらく同様にドイツも日本に対してやってきた。代わって入ったアウトサイドヒッターの2人がしっかり仕事をしていたところを見ても、対策も含めてドイツに軍配が上がったというのが僕の印象です。
ドイツはグロゼルと(セッターのルーカス・)カンパというベテランがいて、チームとしてのケミストリーが起きている。特に昨年パリ五輪の出場権を獲ってからは、よりバランスのいいチームに成長しました。加えて、選手個々もドイツリーグのトップクラブだけでなくイタリア、ポーランド、トルコなど世界の上位クラブでプレーする選手が揃い、日々トップレベルで経験を積んだ選手が多くいます。ヨーロッパでは一番日本に近いチームと評されることがありますが、この試合が象徴するように、まさに粘り強く、厳しい状況でもカムバックする。何度も言いますが、本当に素晴らしい戦いぶりでした。