世間の期待と、本人が抱くイメージとのギャップ。それはこんなところにも表れていた。

「ありがたいことに、ああいう映像に出させてもらって、周りから色々声をかけてもらったり、取材をしてもらったり。でも、私より上手い子は他にいるのになっていう思いもあって。そこにもなんか違和感がありましたね」

　世代トップクラスの逸材であったことに間違いはない。だが、土橋さんが東京五輪を目指す一方で、年齢では同級生に当たる杉原愛子、宮川紗江がリオ五輪に出場していた。

同級生だった杉原愛子（右から2人目）、宮川紗江（左）の2人は16歳でリオ五輪の代表に選出　©JMPA

　高2の春、リオの選考がかかった体操の全日本選手権やNHK杯で、彼女以上の活躍を見せたのが同学年の二人だったのだ。次世代のスター候補と目される中、五輪出場を同学年の二人に先んじられたという事実が重くのし掛かる。

　それでも当時はまだ、その二人に追いつける自信があった。次の東京には必ず自分も出場して、日本代表として活躍したい。そう強く願っていた。

　なにせ、五輪出場は体操を始めた頃からの夢なのだ。

4歳で始めた体操…五輪が夢だった

　実家の近くに体操クラブがあり、その前の道を通るたび、ガラス張りの向こうに広がるトランポリンで弾む子どもたちの姿に魅了された。シャイな性格で「あれをやりたい」とは言い出せなかったが、母親がその様子に気づき、4歳の娘の手を取って体操の道に誘った。

©Takashi Shimizu

　体操が楽しくなり、無我夢中で新しい技に挑戦していた頃、レジックスポーツの先輩である黒田真由さんが2008年の北京五輪に出場する。大舞台で堂々と演技する先輩の姿を見て、「すごい！」と感動した。そこから、五輪に出場し、活躍することが土橋さんの夢になった。

　続くロンドン五輪にも、先輩の寺本明日香さんが出場を果たした。その寺本さんはリオ五輪にも2大会連続で出場。「次は一緒に出ようね」と、4年後の奮起を促された。

　高2の終わり頃、身長の伸びは落ち着いたが、いったん失った感覚を取り戻すのは容易ではなかった。

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