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「卓球が面白くなくなって」伊藤美誠が明かす“パリ五輪選考”へのジレンマ「小学生に勝っても中国人選手に勝ってもポイント同じは変だなと…」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/07/09 11:03
パリ五輪選考で落選し、3大会連続の五輪出場は叶わなかった伊藤美誠。選考方法についての疑問もふくめてNumberのインタビューに答えた
どんどん卓球がおもしろくなくなっていった。
しかし、その道は、極めて厳しかった。
伊藤のモチベーションに大きな影を落としたのはパリ五輪代表の選考方法だった。東京五輪は国際大会でのランキングでシングルスの代表を決めたが、パリ五輪は国内の選考会や大会などを重視し、国内外のポイントで争われることになった。'22年11月に正式決定されるまで宙ぶらりんの状態にいた伊藤は、その夏「海外を重視したいけど、国内にも目を向けなければならない。ハッキリしてほしい」と訴えた。その表情はこれまで見たことがないほど厳しかった。
「私は小さい頃から海外で中国の選手には負けないという目標を立てて、ずっと卓球をやってきたんです。でも、パリには海外だけのポイントでは行けなくなり、国内大会に出なければならなくなった。出場する大会をいろいろ考え、試合日程が詰まり、入念な準備ができないまま、あちこちの大会に出ないといけない。海外で中国人選手を倒すことに集中できなくなり、選考ポイントを獲ることに必死になって、どんどん卓球がおもしろくなくなっていったんです」
パリ五輪の椅子を獲得するために、2022年夏前からTリーグへの参戦も決めた。1季目はシンガポールで試合に出場し、その3日後にTリーグに出場するなどハードな日程をこなし、19試合を戦った。2季目は、試合環境やコンディションを優先して、出るべき試合を選択した。だが、試合をしていく中で、いろんな疑問が生じ、6試合の出場に終わった。
若手の台頭…追われる立場に
「2シーズン、日本生命でチームの勝利と選考ポイント獲得を目標に戦って、すごく楽しかったですし、いろんな経験をすることが出来ました。(日本生命に)声をかけていただいて本当に良かったなと思いました。でも、小学生に勝っても中国人選手に勝っても選考ポイントが同じというルールは変だなと思いましたし、スケジュールやコンディション調整のハードさを思っていた以上に痛感して……。2年目からは思い切ってTリーグには参戦せず、選考会と全日本に全力集中するやり方もあったかも知れないと思いました」