F1ピットストップBACK NUMBER

角田裕毅との来季の契約延長をRBが急いだわけ…異例の早期決着の影にあったアウディの思惑《2年後の選択肢は?》 

text by

尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

PROFILE

photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool

posted2024/06/14 11:01

角田裕毅との来季の契約延長をRBが急いだわけ…異例の早期決着の影にあったアウディの思惑《2年後の選択肢は?》<Number Web> photograph by Getty Images / Red Bull Content Pool

早い時期から来季の去就が取り沙汰された角田だが、結果はRBに1年残留となった

 RBはなぜ6月上旬という極めて早い時期に、オプションを行使したのか。そこには、あるチームの存在が見え隠れする。それは、26年から既存チームのザウバーと手を組んでF1に参入するドイツのアウディだ。

 アウディが26年に向けて積極的に人材を獲得していることは、傘下のザウバーでヒュルケンベルグを獲得したことでもわかる。アウディが今年末に契約が切れるドライバーにコンタクトしていることは公然の秘密で、その中のひとりに角田もいたと思われる。

 アウディが本社を置くドイツの自動車誌『アウト・モトーア・ウント・シュポルト』の編集者によれば、アウディはRBが角田に設定していたオプション解約金の500万ドル(約7億8650万円)を支払う覚悟で獲得に乗り出していたという。

 これが事実だとすれば、ホンダとレッドブルによって育てられてF1へステップアップした角田は、いまでは両社のプログラムの枠を超え、F1界が注目するドライバーのひとりになったということだ。

ポジティブな選択

 今回、角田とRBとの契約が25年末までの単年ということを危惧する声も聞かれるが、ホンダとレッドブルのパートナーシップもまた25年末で切れる。26年からフリーエージェントとなる角田はレッドブル系のチームに残ることもできれば、ホンダが26年から新しくパートナーを組むアストンマーティンに移籍する選択肢もあり得る。さらに、ホンダとレッドブルという育ての親から独立して新しい道を開拓することも可能であり、この単年契約はむしろポジティブだととらえたい。

 角田は次のようにコメントしている。

「レッドブルとホンダは常に僕のキャリアの一部だった。ホンダがレッドブルとパートナーを組む最後の年に、彼らと一緒に戦えることは僕の中でとても大きかったので、それが実現できて良かった。このビッグプロジェクトでチームをサポートできることをとてもうれしく思います」

 今回の契約は、日本のモータースポーツ界にとっても大きな意味を持つ。

 カナダGP終了時点で、角田のF1参戦数は75となった。これは片山右京の97戦、佐藤琢磨の92戦、鈴木亜久里の88戦、中嶋悟の80戦、小林可夢偉の76戦に次いで、日本人F1ドライバーでは6番目に多い数字となる。今年、最終戦まで参戦すれば、その数は90戦で3番目となる。さらに来季の24戦を戦い抜けば114戦となり、ついに日本人最多となる。

 21年に日本人F1ドライバーの最年少デビュー記録を塗り替え、20歳10カ月でF1にデビューした角田。5年目のシーズンとなる25年は、日本人ドライバーが誰も到達していない地平が広がっている。

関連記事

BACK 1 2
#角田裕毅
#RB
#ホンダ
#レッドブル
#アウディ

F1の前後の記事

ページトップ