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角田裕毅との来季の契約延長をRBが急いだわけ…異例の早期決着の影にあったアウディの思惑《2年後の選択肢は?》
posted2024/06/14 11:01
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images / Red Bull Content Pool
カナダGPが行われていたモントリオールの現地時間、6月8日(土)の午後3時半、RBから一枚のリリースが送られてきた。RB(正確には親会社のレッドブル)が角田裕毅との契約を延長し、角田が2025年シーズンもRBにとどまり、F1で5年目のシーズンを戦うという内容だった。
その発表には「契約を1年延長した」という以上の大きな意味が込められている。
まず、そのタイミングだ。角田の契約延長発表は過去3回あるが、いずれも秋だった。それが今回は6月上旬。これは角田にとって最も早いタイミングであるだけでなく、今シーズン末に契約が切れるドライバーの中でも、かなり早いほうだった。
今年はいつになく、来季に向けたシート争いが早めに動いている。その理由は、24年末で契約が切れるドライバーが、年初の時点でじつに14人もいたからだ。
その中で最初に動いたのがシャルル・ルクレール(フェラーリ)で、シーズンが開幕する前の1月に契約を更新。契約期間は5年と見られる。2月にはルイス・ハミルトン(メルセデス)がフェラーリへの移籍を決めて世界を驚かせた。その後、4月にはフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)が残留を発表。この世界に古くからある慣例のとおり、上位チームから順に実力のあるドライバーがシートを埋めていった。
その後、ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)がザウバーへの移籍、セルジオ・ペレスがレッドブルとの契約延長を決め、それに続いて6番目に発表されたのが角田のRB残留だった。
他に取られる前に契約
RBの発表には、こう書かれている。
「RBはオプションを行使して、角田裕毅を確保しました」
オプションとは契約を延長できる権利のことで、RBが保持していた。つまり今回の契約では、RBがほかのチームに取られる前にオプションを行使して角田を残留させたわけだ。
ただし、オプションには期限が設けられており、通常は8月末か9月末に設定されている。したがって、チーム側は期限ギリギリまで待ってオプション行使の有無を決めることが多く、角田の過去の発表が秋となっていたのはそのためだった。
だが今年は期限まで数カ月を残して、RBがオプションを行使した。それが過去の例とは異なる興味深いポイントだ。