野球のぼせもんBACK NUMBER
ソフトバンク伝説的エース「高級車でなく地下鉄通勤」の今…“四軍監督”斉藤和巳が明かす「レベルと環境…一軍との差」「8時間バス移動も」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/11 11:02
現役時代の斉藤和巳。数々の投手タイトルに加えて通算勝率.775を誇り「負けないエース」と呼ばれた
四軍のリアル「8時間かけてバス移動」
初めての監督という仕事。コーチとは異なる役割や視点が求められる。さらに指導するのはこれまで接点のなかった選手がほとんどだ。育成選手が大半で、プロ3年目以内の若手ばかり。当然、これまで見てきたレベルとはまるで違う。
「そりゃギャップはあるけどそこは想定内。別に驚かなかった。それに彼らもいい部分があるから、この世界に入ってきたわけやし。だけど一軍レベルにはまだ届かない課題がそれぞれある。そのあたりをどうしていくかがファームの監督、コーチの仕事。チームにフィットする選手が1人でも育っていってくれればいい。一人一人の野球人生もあるので、そこともしっかり向き合いながら」
それよりも四軍という組織をいかに円滑に運用するか。監督の仕事は試合の選手起用や采配を考えるだけではない。それが想像以上の難しさだったという。
ADVERTISEMENT
特に四軍の場合、スケジュールは1~2カ月先までしか“確定”していない。
「最初から分かっていたのは年間に60試合前後が組まれるのと、四国まで8時間かけてバスで移動することくらい(苦笑)」
どの選手が四軍に来るのか、その人数がどれくらいになるのかは極端にいえばその日毎に変わる。プロ野球の場合、一軍の登録人数は決まっているが、二軍以下にはそれがない。ただ、組織を回していく中でファーム公式戦を戦う二軍、その次に三軍が優先される。だからチームに怪我人が増えれば、四軍は人数ギリギリで試合に臨まなくてはならないことも珍しくない。場合によっては人数不足でチーム編成が出来ずに急きょ試合が中止になることもある。そうなると、選手の起用プランや育成プログラムをまた見直す必要も出てくる。
「選手のやりくりとか、いろんなイレギュラーがあるから予想外のことばっかりよ。そこは現場の四軍首脳陣、三軍の監督やコーチ、コーディネーターとも話しながら、そしてフロントの人ともコミュニケーションをとりながらやってます。そういうところまで考えないといけないとは、正直最初は思ってなかった」