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《順位戦の明暗》藤井聡太名人への挑戦権は豊島将之33歳、深夜23時台の17分間でA級降級・残留が決着…人気棋士は各級でどうなった?
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byAsahi Shimbun
posted2024/03/27 06:01
藤井聡太名人への挑戦権を獲得した豊島将之九段
2021年、22年の名人戦で渡辺に連続挑戦した斎藤と、23年の名人戦挑戦者決定戦で藤井竜王と対戦した広瀬が降級するという事態は、A級の厳しさと実力均衡を表していた。
最終戦に勝ってA級に残留した佐々木は、「A級へ昇級したときは、名人戦挑戦を目指しましたが、9局を戦ってまだまだ遠いなと感じました」と率直に語った。最終戦で敗れてA級降級を覚悟した中村は、終局後に記者から残留を伝えられ、1分近くも沈黙して感無量だったという。A級最終戦で修羅場を体験した両者の来期の戦いぶりに注目したい。
A級に昇級したのは“藤井と縁深い”千田と増田
【B級1組】
A級への昇級者は、9勝3敗の千田翔太・新八段(29)、同じく増田康宏・新八段(26)。
千田八段は、2021年度は藤井竜王に勝って9勝3敗だったが、同成績順位下位で昇級を逃した。22年度のある対局では後手番なのに先手番と思い込み、初手を指して反則負けを喫した。そして23年度は最終戦の1局前に、A級昇級を5期目に決めた。終局後のインタビューには、昨年9月に結婚した中村真梨花女流四段(36)がねぎらいに駆け付け、夫婦で喜びを分かち合う珍しい光景が見られた。将棋ソフトの研究に造詣が深く、奨励会三段時代の藤井にソフトの利用を勧めた。
増田八段は前期に続いて連続昇級した。今期は調子があまり良くなかったが、6局目に羽生善治九段に勝ったのが大きかったという。「矢倉は終わった」「詰将棋は意味ない」など、以前は直截的な物言いが話題を呼んだが、最近はメガネを外し、クリスマスにデートを楽しむなど、青年らしい一面がある。バスケット(NBA)の観戦も大好きだ。2017年に藤井四段が29連勝の最多記録を達成した対戦相手でもある。
B級2組への降級者は、屋敷伸之九段(52)、木村一基九段(50)、横山泰明七段(43)。屋敷九段は最終戦に敗れ、B2に初めて降級した。木村九段は近年、B2降級とB1昇級を繰り返している。
叡王獲得経験のある高見らがB1昇級
【B級2組】
B級1組への昇級者は、9勝1敗の大石直嗣七段(34)、8勝2敗の高見泰地七段(30)、同じく石井健太郎・新七段(31)。
大石七段は2013年のNHK杯戦で羽生三冠を破り、ベスト4進出の実績を挙げた。過去6期のB2では7勝3敗が3回あり、安定した成績を挙げていた。地味だが確実に実力をつけている。