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《順位戦の明暗》藤井聡太名人への挑戦権は豊島将之33歳、深夜23時台の17分間でA級降級・残留が決着…人気棋士は各級でどうなった?
posted2024/03/27 06:01
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Asahi Shimbun
2023年度順位戦の対局が今年3月にすべて終了した。A級で優勝して名人戦の挑戦者になった豊島将之九段、B級1組からC級2組までの各クラスで昇級した棋士たちの成績やエピソードなどを、田丸昇九段が紹介する。その一方で、降級した棋士や引退が内定した棋士もいて、順位戦ならではの明暗に分かれた。また、2023年度に晴れて棋士になった4人の新四段も併せて紹介する。【棋士の肩書は当時。年齢は3月末日時点】
久々の「藤井聡-豊島」タイトル戦が名人戦で実現
【A級】
昨年の対局日程を終えた時点で、6連勝の豊島将之九段(33)と5勝1敗の菅井竜也八段(31)が優勝候補になっていた。その両者は年明けから2連敗して優勝争いはもつれた。2月29日の最終戦では豊島と菅井が対戦し、豊島が敗れると5勝3敗の永瀬拓矢九段(31)にもプレーオフ進出の可能性が生じた。そして、豊島ー菅井戦は激闘の末に豊島が勝ち、藤井聡太名人(21=竜王・王位・王座・棋王・叡王・王将・棋聖を合わせて八冠)への挑戦者になった。
2019年の名人戦で豊島二冠は佐藤天彦名人(36)を破って新名人に就き、20年の名人戦で渡辺明二冠(39)に敗れた。その後、20年度と22年度のA級で6勝3敗の成績を挙げたが、挑戦者争いから外れた。23年度に優勝して名人戦の舞台に登場するのは4年ぶり。最近は自分の将棋を変化させたいと思い、振り飛車をたまに用いている。
藤井八冠と豊島九段は、過去に王位戦、叡王戦、竜王戦のタイトル戦で対戦し、いずれも藤井が制している。3年ぶりのタイトル戦の名人戦で、豊島の奮闘ぶりをまずは期待したい。注目の名人戦第1局は4月10日、11日に行われる。
A級残留争いは23時台の17分間で大きく動いた
A級の地位は一流棋士のステータスで、在籍することに大きな価値がある。その意味で残留争いが深刻だ。最終戦を迎えた時点で、6人もの棋士が降級の瀬戸際に立たされていた。
中でも新A級棋士の佐々木勇気八段(29)と中村太地八段(35)は、順位がともに下位なので危うかった。時系列で追っていこう。
〈23時19分〉中村八段は永瀬九段に敗れて4勝5敗で終えた時点で残留は未定だった。
〈23時20分〉佐々木八段が斎藤慎太郎八段(30)に勝って4勝5敗としたが、こちらも残留は未定で、一方の斎藤は3勝6敗で降級が決まった。
〈23時24分〉稲葉陽八段(35)が佐藤九段に勝って4勝5敗とし、順位上位で残留を決めた。佐藤は4勝5敗で、残留は未定だった。
〈23時36分〉広瀬章人九段(37)は渡辺九段に敗れ、3勝6敗で降級が決まった。渡辺は5勝4敗。
こうして深夜23時台の17分の間に残留争いが決着した。