Sports Graphic NumberBACK NUMBER

稲葉篤紀に聞く、プロ野球選手の影響力を生かした北海道日本ハムファイターズのスポーツ振興と地域課題解決策 

text by

佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

PROFILE

photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/12/13 07:00

稲葉篤紀に聞く、プロ野球選手の影響力を生かした北海道日本ハムファイターズのスポーツ振興と地域課題解決策<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

現役時代から地域貢献活動に熱心に関わり、2015年からは球団の活動の旗振り役を務めてきた稲葉篤紀氏

「ウインタースポーツを含めてこれだけ1年間スポーツを楽しめる地域なのに、子供達の体力がないのは何故なのか、楽しく運動できるためにはどうしたらいいのかと色々考えてきました。活動の基本は、地域の皆さんが心身ともに健康であってほしいということ。そのためにどんなことができるか、課題もある分、まだまだ北海道には開拓の余地がある。スポーツの繋がりを通してやれることはたくさんあると思っています」

 今年3月には、新球場エスコンフィールドHOKKAIDOと周辺エリアを含めた北海道ボールパークFビレッジが開業した。地域の新たなコミュニティの場としても可能性は広がるが、その一方でSC活動の原点でもある「地域に出向く」ということを大事にしていきたいとも言う。

「やはり色々な地域に選手が足を運ぶことが一番いいきっかけになると思います。本拠地である北海道は本当に広いですからなかなか足を運べない方もいる。来てほしいというだけではなく、出向く、ということを大事にしていきたいですね」

鎌ケ谷で伝える社会貢献の意義

「SC活動」が定着するに連れて、選手たちの意識も徐々に変化してきている。「コロナ禍を経験したという背景もあるのかもしれませんが、ここ数年は選手の方から何か行動を起こしたいとか、こういう活動をしてみたい、と相談を受けることも出てきました」と笹村グループ長。稲葉氏はじめ、先頭に立ち活動する先輩の姿を見て育った選手たちが、自分には何ができるかを考え積極的に発信し始めたのだ。

 稲葉氏は新シーズンから二軍監督に就任することが決まった。主戦場は二軍本拠地の鎌ケ谷に移るが、選手を育成し一軍に戦力として送り込むという大役を担う。

「選手には、鎌ケ谷ではなく北海道で活躍することを目指して『僕と一緒にプレーしていちゃいけないよ』ということを言っていくつもり。と同時に、プロ野球選手はすごく影響力があるんだよ、ということも伝えていきたい。若い頃は自分のことで精一杯なのは当然だけれど、その中でも社会貢献という意識を持ち、地域の色々な方と触れ合って、さまざまな活動を通して成長していってほしいと願っています」

 北海道移転から20年目の節目を経て、2024年、ファイターズは新しいステージに立つ。社会貢献活動は成果が見えづらく、すぐに鮮やかな花を咲かせるものではない。それでも試行錯誤を繰り返し耕し続けてきた大地は、多くの人の思いとともに今、豊かな土と希望の種を宿している。

アスリートの社会貢献活動を推進するHEROs。詳しくはこちら

https://sportsmanship-heros.jp/

関連記事

BACK 1 2 3

ページトップ