F1ピットストップBACK NUMBER

「本当に謎です」角田裕毅が新チームメイト・リカルドとの初戦に敗れた、不可解なレース戦略の真相 

text by

尾張正博

尾張正博Masahiro Owari

PROFILE

photograph byGetty Images / Red Bull Content Pool

posted2023/07/26 11:00

「本当に謎です」角田裕毅が新チームメイト・リカルドとの初戦に敗れた、不可解なレース戦略の真相<Number Web> photograph by Getty Images / Red Bull Content Pool

ハンガリーGP決勝では17番手スタートの角田。オープニングラップで11番手までジャンプアップしたのだが…

 レースは1周目に角田が11番手を走行していたのに対して、リカルドは18番手。角田がその後、疑問が残るピットインによって徐々にポジションを下げていったのに対し、リカルドは2回目のピットストップを早めに行って、最終的に角田の前でフィニッシュした。結果だけを見たら、角田はリカルドに負けたわけだが、レース内容は決して劣っていなかった。角田に同情する者の中には、チームがピットストップ戦略で故意にポジションを入れ替えたのではないかという声すらあった。

 しかし、コンストラクターズ選手権の順位によって手にする分配金の違いを考えれば、エンジニアが自チームのドライバーの順位を下げるような戦略を企てたとは考えにくい。角田の謎の戦略は、一か八かの賭けに出たというのが正直なところだろう。

 ところが、角田にその戦略の意図は伝わっていなかった。戦略というのは考える側が正しい決定を行うだけでなく、実行する側が納得して行わなければ成功はしない。そこで大切になるのが、コミュニケーションだ。

リカルドのコミュニケーション能力

 ホンダのトラックサイドゼネラルマネージャーとして現場を統率している折原伸太郎は、グランプリ期間中はアルファタウリ側で仕事している。その折原がリカルドを見ていて感じたのが、コミュニケーション能力の高さだった。

「リカルドのコメントを聞いていると、フィードバックが的確というだけでなく、セッティングの進め方がさすがベテランだなと感じました。アルファタウリのようなチームに、リカルドのような8勝を挙げているビッグネームのベテランが乗るのは初めてだと思うんですが、クルマの挙動がおかしかったり、タイムが伸びないセクターがあったりすると、経験の浅いドライバーというのは過剰に反応しがちなんです。するとチームはセッティングを変えようと、クルマをいじり始めることが多い。でも、リカルドは『たぶんあれは風のせいだから、無視してくれ』とか、『今回ここでタイムを失ったのは僕がミスったせいだから、ジタバタ動かなくていいよ』とか、言うんです」

【次ページ】 学びの機会を活かせるか

BACK 1 2 3 NEXT
角田裕毅
アルファタウリ
ダニエル・リカルド

F1の前後の記事

ページトップ