F1ピットストップBACK NUMBER
「本当に謎です」角田裕毅が新チームメイト・リカルドとの初戦に敗れた、不可解なレース戦略の真相
posted2023/07/26 11:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images / Red Bull Content Pool
「何をやりたかったのか、まったくわからなかったです。本当に謎です」
これは、7月23日のハンガリーGP決勝で1周目に11番手を走行しながら、15位に終わった角田裕毅のレース直後のコメントだ。
確かに、このレースで角田が所属するアルファタウリが採った戦略にはいくつかの疑問点があった。例えば、1回目のピットストップの直前にチームは角田にタイヤの状態について無線で尋ね、角田が「タイヤはまだ大丈夫」と返信していたにも関わらず、直後にピットインの指示を出した。
これについて、チームは「ポイント争いしていたライバルの動きに合わせた」と釈明したが、2回目のピットインではそのライバルがピットインしたにも関わらず、まったく動かなかった。ライバル勢がタイヤを換えてペースアップする中、古いタイヤでロングランを強いられた角田は、これにより逆転するチャンスを自ら逃す結果となった。
チームの思惑
この件について、チームは明確な説明をしていないが、1回目のピットストップではピットクルーがタイヤ交換に手間取り、ポジションを2つ落としていたことが関係していたと考えられる。1つだけでなく3つもポジションを上げるためにライバルと同じ戦略では勝ち目はない。セーフティーカーが導入されるのを待って、ピットストップでのロスを短縮して逆転するという博打に出ていた可能性が高い。
レース関係者の中には、角田に同情する声もある。チームにとっては11位も15位もポイント圏外という意味では同じかもしれないが、戦っているドライバーにとっては11位と15位は大きく違うからだ。
アルファタウリはこのハンガリーGPから、ニック・デ・フリースに代えてベテランのダニエル・リカルドを起用してきた。リカルドはF1で過去に8勝を挙げ、レッドブル、ルノー、マクラーレンといったトップチームを渡り歩いてきた経験豊富なベテランだ。チームメイトが最大の敵とも言われるF1の世界。角田がリカルドに対して、どんな走りを披露するのか注目された。