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王座戦直後、総武線に乗って…大日本プロレス“東京→名古屋ダブルヘッダー”をやり遂げた選手たちの思い「自慢にならないことで燃えるのがインディーです」

posted2023/07/04 17:00

 
王座戦直後、総武線に乗って…大日本プロレス“東京→名古屋ダブルヘッダー”をやり遂げた選手たちの思い「自慢にならないことで燃えるのがインディーです」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

ブッキングの手違いから始まった遠距離ダブルヘッダー。野村&阿部のアストロノーツは王座を防衛

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Norihiro Hashimoto

 始まりは会場ブッキングの手違いだった。5月28日、大日本プロレスは「東名ダブルヘッダー」興行を開催。その名の通り東京の後楽園ホールと名古屋・ダイアモンドホールでの昼夜興行だ。

 インディープロレスの世界では、団体が1日に複数回の興行を開催するのは普通のこと。ただしそれは同一会場での話だ。選手個々が移動しての別会場ダブルヘッダーもよくあるが、1つの団体が別会場、それも長距離移動しての2大会は異例中の異例。

異例の「遠距離ダブルヘッダー」

 後楽園もダイアモンドホールも大日本が定期的に使用しており、気がついたら日曜日にどちらの会場も押さえていた。フリーで参戦している阿部史典は「これってミスですよね?」と団体に確認の連絡をしたそうだ。

 手違いが発覚したなら、どちらかの会場をキャンセルすればいいこと。しかし大日本はそうしなかった。あえて遠距離ダブルヘッダーを敢行することにしたのだ。社長の登坂栄児は言う。

「どちらか一つキャンセルするという考えはなかったです。インディペンデントで二十何年やってるのでね。2つやるということしか考えなかったです。むしろチャンスだなと思いましたね。我々の“突進力”みたいなものが見せられるんじゃないかと」

 インディペンデント=インディー。そこには“メジャー”とは違う生き方がある。それが誇りでもある。キャリア28年、大日本の“顔”の1人であるアブドーラ・小林は言う。

「人がやらないことをやるのがインディー。人が“できない”ことじゃなく“やらない”ことをやるんだ」

あえて選んだ「キツいマッチメイク」

 効率や費用のことを考えたら、普通はやらない異例の興行。最初に名乗りをあげたのはBJW認定タッグ王者チーム、野村卓矢と阿部史典のアストロノーツだった。7度目の防衛戦に5.28昼の部・後楽園大会を指定したのだ。

 挑戦者に指名したのは関本大介&岡林裕二組。過去に同王座を5度戴冠、全日本プロレスでも世界タッグ王座、アジアタッグ王座を獲得しているトップ中のトップだ。アストロノーツは、この関本&岡林からの勝利がなかった。直近3試合はすべて引き分け。ここは絶対に勝たなければ、という試合をダブルヘッダーの1試合目でやる。夜の名古屋大会がしんどくなるに決まっているのに。なぜか。

「反骨心です」

 野村は言った。それ以上の細かい説明はしなかったが、気持ちはよく分かる。ダブルヘッダーだからといって楽な試合でお茶を濁すと思われたらたまらない。昼も夜も絶対に手を抜かないんだ俺たちは、という意思表示だ。

 その心意気に団体も乗った、ということだろう。夜の部ではセミファイナルで野村vs.関本、メインで阿部vs.岡林という2大シングルマッチが組まれる。アストロノーツと関本&岡林の変則2連戦だ。この組み合わせで1日2試合は相当にキツい、どちらにとっても。他の選手が入った6人タッグ、8人タッグでもない。真正面からぶつかり合うしかないカード。大日本プロレスにはデスマッチ、通常ルールそれぞれのシングル王者もいるわけだから、明確に“あえて”のマッチメイクだ。

「これは大日本プロレスからの挑戦状でしょうね。“やってやるよ”と思ってます。でも大日本にとっても挑戦かもしれない。それに、このマッチメイクでも関本さん、岡林さんは全然OKでしょうね。“分かりました”だけだったはず」(阿部)

【次ページ】 “35分50秒”の肉体の削り合い

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