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低迷続くホンダRC213Vで初勝利、リンスの超絶パフォーマンスの理由と他のホンダ勢が不振の真相
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/04/19 17:00
エースのマルケス不在のなか、リンスは今シーズンの決勝レースでホンダ勢として初めて表彰台を獲得した
対照的に、チームメートの中上貴晶、レプソル・ホンダのジョアン・ミルは、今大会もリアのトラクション不足に苦しんだ(マルケスは怪我の影響で欠場)。加えて、スプリントと決勝で気温が大きく変わって苦戦に拍車をかけ、決勝では2人とも転倒リタイアに終わった。リンスと同じバイクに乗っているとは思えない苦戦が続いた中上に、リンスとの走りの違いを訊ねると、こう答えてくれた。
「データを見ると、リンスはコーナーリングスピードの高いスムースなライディングをしている。Moto2的な走りといえばいいのかな。僕やミルは典型的なMotoGPの乗り方。止めて、曲げて、加速するという、性能曲線でいうとV字の乗り方。そういう乗り方だとCOTAでは一段とスピニングがひどく、エンジンのパフォーマンスを使い切れなかった」
金曜日のプラクティスで試しにエンジンのパワーを出してもらったら、スピニングがひどくてまるっきりだめだったとも証言した。ホンダRC213Vはエンジンのパワーがないのではなく、エンジンの性能を出せる車体ではないから苦戦している。しかしその車体でも、リンスは彼独自の乗り方でRC213Vを優勝に導いた。
いまだドゥカティ勢の優勢変わらず
これで次のレースも……と期待してしまうが、リンスが次戦以降も今回のような走りができるかといえば、そう簡単ではないだろう。リンスがどのサーキットでも安定した速さを発揮するには、コースによって乗り方を変える器用さも必要だし、RC213Vをもっと良くしていかなくてはならない。
今年は予想通りドゥカティ勢が速く、ポルトガル、アルゼンチンと続いた序盤の2戦はドゥカティ勢の圧勝だった。4チーム8台と数でもライバルを圧倒するドゥカティ勢のあまりの速さにしらけムードが漂っていたが、COTAではリンスが優勝、ヤマハのファビオ・クアルタラロが3位になり、日本の2メーカーがともに今季初表彰台を獲得した。
果たして、これからどんなレースが見られるのだろうか。いずれにしても、「得意とするサーキット」で見事に力を発揮したリンスに大きな拍手を送りたい。
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