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低迷続くホンダRC213Vで初勝利、リンスの超絶パフォーマンスの理由と他のホンダ勢が不振の真相 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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posted2023/04/19 17:00

低迷続くホンダRC213Vで初勝利、リンスの超絶パフォーマンスの理由と他のホンダ勢が不振の真相<Number Web> photograph by Satoshi Endo

エースのマルケス不在のなか、リンスは今シーズンの決勝レースでホンダ勢として初めて表彰台を獲得した

 サーキットは大きくわけて2種類がある。

 ひとつは加速→減速→曲がるを繰り返す「ストップ&ゴーサーキット」。日本GPが開催されるもてぎに代表されるこのタイプのサーキットは、言葉を変えれば、加速、最高速が大きな意味を持つ「エンジンサーキット」である。もうひとつはCOTAや、オーストラリアGPが行われるフィリップアイランドのような中高速コーナーが連続する「ハイスピードサーキット」。コーナーで高いスピードをキープし、アクセルワークで駆け抜ける流れるようなコースで、エンジンパワーや加速、最高速という数値の差が出にくく、スリップストリームを使い合う接戦になることが多い。

 リンスは後者のサーキットを得意とし、COTAではこれまでMotoGPの3クラスすべてで勝利し、今回はMotoGPクラスで2度目の優勝となる。フィリップアイランドでも3クラス制覇を成し遂げているし、イギリスGPの開催されるシルバーストーンやアラゴンGP(スペイン)でも優勝しており、その舞台はすべて「流れるようなサーキット」である。

 去年の最終戦ではテクニカルコースのバレンシアで優勝し、MotoGPから撤退するスズキのラストランを優勝で飾った。そのリンスが今度は低迷が続くホンダRC213Vで、2021年のエミリア=ロマーニャGP(イタリア・ミサノ)でマルク・マルケスが優勝して以来、ホンダ勢として2年25戦ぶりの優勝を達成した。昨シーズン終盤戦は3戦して2勝。ホンダに移籍した今シーズンも3戦目にして優勝と直近6戦で最多勝利を挙げ、決勝レースに限ればディフェンディングチャンピオンのバニャイアの2勝を凌ぐ活躍を見せている。

リンスだけが乗りこなしたRC213V

 リンスにとって得意のコースが続いたとはいえ、苦戦続きのRC213Vで優勝するとは思わなかった。いいレースをするだろうと思ったが、プラクティス、予選、スプリント、決勝と周囲も驚嘆の連続。開幕戦ポルトガルGP以来のスプリント・決勝の完全制覇を目指すバニャイアを、プレッシャーで押しつぶした格好だった。

 得意とするサーキットを持つ選手は、おおむね選手生命が長い。なかなかチャンピオンにはなれないが、時々、素晴らしいレースをして印象に残ることがよくある。リンスは「COTAは大好きなサーキット」と語り、大会前からレースを楽しみにしていた。優勝という結果はリンスにとっても予想以上だったに違いないが、ただただ「すごいレース」を見せてくれた。

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