「簡単に勝てる試合」なんてひとつもない

　少しキャッチャー目線の話をすると、「国際大会で初めてバッテリーを組むピッチャーの球を受けるのは大変なのでは？」と聞かれることがしばしばあります。結論からいうと、そこはあまり心配しなくても大丈夫です。日本でやっている選手なら、同じチームじゃなくてもある程度の特徴はわかっていますから。仮に佐々木朗希の165kmのストレートでも、何球か受けて、タイミングさえつかめれば問題ないのがプロのキャッチャーのレベルです。

　ただ、問題はダルビッシュや大谷のようなMLBの投手。ダルビッシュは宮崎キャンプから参加して3人（甲斐拓也、中村悠平、大城卓三）が順番に球を受けているし、ライブBPにも登板しているので不安はないですが、大谷の場合は「ぶっつけ本番」の難しさがあるかもしれません。とはいえ、一度実戦で登板してしまえば大丈夫でしょう。

宮崎キャンプで甲斐拓也と話し込むダルビッシュ有　©Hideki Sugiyama

　もちろん個々のピッチャーによって「どんなキャッチャーが投げやすいか」の感じ方は違いますが、今大会は3人全員が誰の球を受けても問題ないようにキャンプから準備を進めていました。メインを誰か1人に固定しても、状況に応じて変えていってもいい。ただ、最後の強化試合で甲斐をスタメンに起用したということは、第1戦の大谷、第2戦のダルビッシュは彼が受けるんじゃないかと予想しています。

　とにかく国際大会には「絶対」がありません。韓国にだってオーストラリアにだって、勝てる保証はない。大谷のおかげで日本はもう勝ったような盛り上がりですけど、まだ1試合もやっていないわけですから。今回の侍ジャパンが本当に「史上最強」だったとしても、簡単に勝てる試合はひとつもないと思ったほうがいい。まあ、始まる前のお祭り騒ぎも、これはこれで楽しいですけどね（笑）。大会が進むにつれて日本中がさらに盛り上がっていくような、素晴らしい戦いを期待したいです。＜3月10日の韓国戦後にも谷繁氏の解説を掲載予定です＞

（構成：NumberWeb編集部）

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