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「大谷翔平のバントには完全にお手上げです」谷繁元信が徹底解説“あのセーフティ”はなにがスゴいのか?「もし僕がキャッチャーだったら…」
posted2023/03/18 11:04
text by
谷繁元信Motonobu Tanishige
photograph by
Naoya Sanuki
3月16日、WBC準々決勝でイタリアを撃破し、5大会連続の準決勝に駒を進めた侍ジャパン。大谷翔平の熱投や“まさか”のセーフティバント、岡本和真の“最高”な3ラン、そして誰もが待っていた村上宗隆の復活……。米マイアミ行きのチケットを勝ち取った最大のポイントはどこにあったのか。2006年WBC優勝メンバーで元中日監督の谷繁元信氏が、NumberWebの短期集中連載で侍ジャパンの戦いを徹底解説する。
拙攻で失いかけた「流れ」を引き寄せたのは…
1次ラウンド、そしてイタリアとの準々決勝を振り返ってまず思うのは、「今回の侍ジャパンは本当に強い」ということ。いかに選手層が厚いといっても、ほぼ初対戦の相手に、終わってみれば明確な差をつけて5連勝したわけですから。今大会のドミニカ共和国(2勝2敗で1次リーグ敗退)の結果が物語っていますが、どれだけ力があっても「国際大会で勝ち切る」というのは非常に難しいんですよ。準決勝、決勝がどういった結果になるかはわかりませんが、この5連勝には相当な価値がある。称賛されるべきチームだと思います。
とはいえ、イタリア戦も決して楽な試合ではありませんでした。1回、ヌートバーがヒットで出て、近藤健介が四球でつないでノーアウト一・二塁。センターに抜けようかという大谷翔平の当たりをシフトに絡め取られて、その後の吉田正尚、村上宗隆が倒れて無得点。そして2回も、おそらくはサインミスによる盗塁で一塁走者の岡本和真がアウトになった。状況は違いますが、重盗失敗で内川聖一がアウトになった2013年大会の準決勝を思い起こしました。
ああいった拙攻が続くと、相手に流れを持っていかれるのが野球の理です。しかしそれを断ち切ったのが、大谷の投球でした。初回からずっと声が出ていて、中国戦とはまったく違うギアの入れ方をしていた。前の回の攻撃でまずい流れになりかけた2回も、そして3回も、それを察知して「絶対に抑える」という気迫が伝わってきました。「やっぱり大谷はすごいな……」と惚れ惚れしながら見ていましたよ。