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“異様な期待値”のWBC…ダルビッシュ発言に「その考えがあったら落球しなかったかも」G.G.佐藤が語る優勝候補→完敗→中傷の“失敗学”
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byYuki Suenaga
posted2023/02/27 11:02
“世紀の落球”をしてしまったG.G.佐藤だから言える栗山監督への提言、日本代表がプレッシャーに苛まれないための事前策とは
「プロの世界だし、日本代表に選ばれているわけですから、僕は何かを言われても仕方ないと思っています。国際大会って、勝ちが全てですよね。『惜しかった』はない。逆に言えば、何かミスしても勝ったら全部OKになる。その代わり、負けたら叩かれる。ただ、野球に関しては期待値が高過ぎる。世界一が基準になっている。『違う景色を見たい』ぐらいにしてほしいなと(笑)」
メディア&ファンも「試される」WBC
批判と誹謗中傷は違う。的を射た評論さえも封印される空気になれば、逆の意味で異様な世界が生まれる。一方で、単に失敗した人間を責めるだけの指摘は、選手へのプレッシャーを増幅させる。調べた限り、大会前にG.G.のレフト起用を疑問視する声は上がっていなかった。しかし、本番でエラーをした途端、一斉に叩かれ始めた。もし事前に不安が指摘されていれば、首脳陣の方針も変わったかもしれない。
「今はSNSもありますから、メディアだけでなくファンも発信できる。その中に、いろんな意見があって当然だと思うんですよね。ただ、無理に誰かの意見に合わせたり、一時的な感情で拡散したりする必要はないと思います。主流派に同調すると、結果的に1つの大きな渦ができてしまう」
いつの時代も、バッシングの構造は同じだ。SNSで誰でも発信できる世の中になった今、一方向的な見方が広がる加速度は増している。
「個人的には、誰かが失敗したら鼓舞してあげたい。もう一回頑張ろうと思えるような奮い立たせる言葉を掛けたい。僕は叱咤激励ではなく、“鼓舞激励”をしたいですね」
メディアもファンも世界一を望んでいる。しかし、仮に大きなミスが生まれたり、目標を達成できなかったりした時に監督、コーチ、選手たちをどう迎えるのか。北京五輪の教訓が東京五輪で生かされたように、批判すべき部分があれば批判は必要だろう。一方で、単なる誹謗中傷は誰の得にもならない。
WBCは選手だけでなく、メディアやファンも試されている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。