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“異様な期待値”のWBC…ダルビッシュ発言に「その考えがあったら落球しなかったかも」G.G.佐藤が語る優勝候補→完敗→中傷の“失敗学”
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byYuki Suenaga
posted2023/02/27 11:02
“世紀の落球”をしてしまったG.G.佐藤だから言える栗山監督への提言、日本代表がプレッシャーに苛まれないための事前策とは
「僕にもその考えがあったら、落球しなかったかもしれません。シーズン中も重圧を感じていたので、国際大会も大丈夫と思っていましたが、想像を絶するプレッシャーがありました。でも、考え方の問題だったかもしれない。『ミスをしてはいけない』と気負っていたけど、何試合も行えば世界一になるチームでも必ずミスは出てくる。あらかじめ、失敗は起こり得ると想定していれば、切り替えられる余裕が持てたかもしれない。どんな意識で臨むかは大事だと思います」
栗山監督へ“2つの提案”
その上で、G.G.は栗山監督に2つの提案をする。まず、世界各国がどのような気持ちでWBCに臨むのか。プレーのデータだけでなく、メンタル面も知っておくべきだという。
「北京五輪の準決勝でウイニングボールを捕った韓国の選手がうずくまって喜んだ。もし自分に同じ場面が訪れても、あそこまではやらなかったと思うんですよ。あのシーンを見た時、韓国は何を背負って戦ってたのかなとすごく知りたくなった。『メダルを取れば徴兵が免除されるから』とよく言われてますけど、選手に直接聞いたわけではないですよね。背負ってるモノがわからない相手と戦うのは怖いですよ」
もう1つ、“世界一以外の動機付け”を発信してほしいと考える。栗山監督はメンバー発表の記者会見で目標を問われ、「世界一。それだけです」と言い切った。この発言は、北京五輪の星野仙一監督の「金メダル以外いらない」と似寄る。
「北京の準決勝で負けた後、キャプテンの宮本(慎也)さんが『銅メダル取りに行くぞ』と鼓舞してくれたのですが、正直僕には響かなかった。金メダルだけを目指してやってきた中で、気持ちの持っていき方が難しかった。アテネ五輪の時は長嶋(茂雄)さんが『野球界の伝道師であれ』と言っていた。今回のWBCも、世界一以外の目標も明確に公言してほしい。『良いプレーをして子供の野球人口を増やそう』でもいいと思うんです」
必ずしも世界一になれるとは限らない。期待が大きければ大きいほど、想定外の失敗が起こった時に失望が深くなる。メディアやファンが一様にその心情を吐き出せば、選手はなおさら自分を責めるようになる。北京五輪のG.G.がまさにその状態に陥った。