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日本のサッカーゴールが世界基準に追いついたのは2002年日韓W杯から? 以前は決まったはずのゴールが認められず敗れる悲劇も…
posted2022/12/18 06:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Kiichi Matsumoto
50代前半の筆者にとって高校時代、部活でお世話になったサッカーゴールは金属の支柱だらけ。やたら重く、大人数で「せーの」で持ち上げ、「せーの」で地面に置いたものだ。
だが現在、Jリーグや国際試合で見るゴールはまったく違う。支柱は左右のポストとクロスバーだけで、残りはネットというシンプルなつくり。これは地下に設けた埋設管に、ポストを埋め込むことで立つ仕組みになっているからだ。そしてこの手のゴールには、後方に必ず2本の“サブポール”が立っている。このポールからロープでネットを引っ張り上げることで、ゴールは美しい直方体となる。
J1からJ3までほとんどのスタジアムに設置されているのは、株式会社ルイ高の埋込式サブポールタイプ『RT-F011909』(一対税込118万8000円)。サブポール、埋設管、ネットなどは別売りとなっている。同社の営業管理部責任者、岩藤浩司さんが言う。
「いちばんこだわったのはクロスバーです。直径12cm、長さ7m56cmもあるため、金属の自重で中央部が下にたわみがちになってしまう。そうしたたわみが一切ない一直線のバーにするため、パイプの強度や構造設計には、かなり工夫を凝らしました」
きっかけは日韓ワールドカップ
さて、ゴールから支柱が減っていったのには次のような理由がある。
「以前のようにゴール内にも支柱がある構造では、シュートが決まったのに奥の支柱に当たって跳ね返ったりすることがある。実際に高校サッカーの県大会決勝で、ある高校が決まったはずのゴールを認められずに敗れるという悲劇も起こりました。そうしたことを防ぐために支柱をなくしていったわけです」
過去のワールドカップを調べると、1978年アルゼンチン大会まではネットに立体感を出すため、ゴール内に支柱があり、'82年スペイン大会から現行のサブポール型に移行したことがわかる。だが岩藤さんによると、Jリーグなど日本のゴールがサブポール型に完全移行したのは、スペイン大会の実に20年後だったという。いったい、なにがあったのか。
「2002年日韓大会です。弊社は日本の組織委員会に名を連ねていたので、サブポールをゴールからどれだけ離して立てるかといった規格づくりに参加しました。以来、日本サッカー協会の定めた“スタジアム標準”で埋込式とサブポール式が原則になったわけです」
ワールドカップ招致を機に、日本のゴールは世界基準に追いついたのだ。