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“初の女性棋士”を目指す里見香奈女流五冠につながる潮流… 女流棋界発足の功労者は大山康晴十五世名人だった〈女流棋士48年の歴史〉
posted2022/08/16 11:02
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
BUNGEISHUNJU
里見のプロ公式戦での活躍、合格の見込み、女流棋界の歴史について、田丸昇九段が記す(段位は当時のもの)。
里見女流五冠は、2021年7月から2022年5月までのプロ公式戦で、次の棋士たちに計10勝した。対局順に列記する。
黒田尭之五段、山本真也六段、高田明浩四段、本田奎五段、西川和宏六段、浦野真彦八段、澤田真吾七段、池永天志五段、冨田誠也四段、古森悠太五段。
彼らの半数以上が20代から30代の精鋭だった。そのうち、澤田七段は前期順位戦でB級1組に昇級、本田五段は2020年の棋王戦で挑戦者、池永五段は今期王位戦で挑戦者決定戦に進出と、いずれも素晴らしい実績を挙げている。
また、里見は6月に今期棋聖戦で出口若武六段(前期叡王戦で藤井聡太叡王に挑戦)にも勝った。このように、実績や実力がある若手棋士たちを連破し、勢いやフロックの勝利ではなかった。プロ編入試験について里見は当初、慎重な姿勢だった。しかし、1カ月の熟慮の末に受験を表明し、「全力を尽くしますので、静かに見守っていただけると幸いです」とコメントした。
里見はプロ編入試験で、いずれも20代前半の徳田拳士四段、岡部怜央四段、狩山幹生四段、横山友紀四段、高田四段と、新しい四段の順に5人と対戦する(持ち時間は各3時間)。8月から月1局のペースで行われ、3勝すれば合格となる。
なお試験官の5人の棋士とは、プロ公式戦や棋士養成機関の奨励会(里見は2011年から2018年まで在籍)で対戦したことがあるという。
実績を見れば合格の可能性は高いと思うが
プロ編入試験は2014年4月に設けられた。アマチュアや女流棋士がプロ公式戦で、前述の条件を満たせば受験できる。
過去には、2014年12月に今泉健司(五段)、2020年2月に折田翔吾(四段)が合格し、四段に昇段して棋士になった。女流棋士の受験は里見が初めて。
里見は後日の記者会見で、「正直なところ、自分の実力からすると難しい戦いになると思いますが、力を出し切れるように対策を練っていきたい」と、控えめに意気込みを語っている。