令和の野球探訪BACK NUMBER
巨人阪神の参入、東京ドームで決勝戦、イチローも対戦…新時代を迎えた女子野球の現在地とは? プロリーグ消滅も競技人口は300→2000
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byWomen's Baseball Federation of Japan
posted2022/04/27 11:00
東京ドームで開催された全国高等学校女子硬式野球選抜大会。史上最多となる2690人の前で行われた
トップカテゴリーにも変革が起きている。
健康食品会社の『わかさ生活』が設立した日本女子プロ野球機構によって、2009年から日本女子プロ野球リーグが発足したが、運営難により2021年を最後に無期限の活動中止となった(リーグ戦が開催されていたのは2010年から2020年まで)。
それを機に各チームに選手たちが分散。NPB球団初の公認チームである西武ライオンズ・レディース(組織や運営は別)や、都市対抗大会に出場した男子野球部を持ち独立リーグ・栃木ゴールデンブレーブスの運営も担うエイジェック、2021年に設立された阪神タイガースWomen(以下、阪神)などに経験豊富な選手たちが散らばった。
2期目となる今季を19人の選手で戦う阪神で主将を務める三浦伊織(30歳)もその1人だ。女子プロ野球の京都フローラで11年間プレーし、昨シーズンから阪神に加入。チームが運営するアカデミーで指導に携わりながらも、男子と同じ伝統ある縦縞のユニフォームで白球を追いかけている。
「私たちの上の世代の人が頑張ってきてくれたから、今、NPB球団に女子野球チームができるようになりました。それをもっと良いものにしていきたいので、みんなで女子野球を広めていけたらなと思っています」
「興行化はもう少し時間がかかる」
阪神で三浦のように球団職員としてアカデミーの指導にあたる選手は4人。その他の選手は別の仕事で生計を立てており、希望者には球団としてグループ企業や女子チームをサポートする企業への就職斡旋も行う。したがって、野球の活躍によって給料が変わるというシステムは取っていない。
運営を担う1人である畑野幸博氏(阪神タイガース事業本部振興部部長)は「興行化していくにはもう少し時間がかかると思いますが、そこに向けたアプローチには可能性を感じています」と話す。
まずは“輪”を広げていくことに重きを置いており、大事なことについては「拙速にならないことです。一番大事なことは長く続けることだと思います。その中で、できるだけ多くの方に見てもらえるようなスポーツに発展させていけたらいいなと思っています」と、地に足をつけた成長を目指している。